厚生年金と雇用保険

失業した場合に受給できる雇用保険と60歳代前半の老齢厚生年金は、同時に受け取れません。また定年後も継続勤務する人や再就職する人は、賃金が減った場合に雇用保険から給付金を受け取れる場合があります。

求職中の場合の失業給付(基本手当)

65歳未満で会社を退職し、ハローワークに求職の申込をすると、雇用保険の失業給付(基本手当)を受け取れます。ただし、失業給付を受け取っている間は、加給年金も含めて老齢厚生年金が全額支給停止されます。失業給付の受給が終わると、年金の支給が再開されます。

 

60歳代前半の年金額の方が多い場合は、基本手当の受給手続きをしないといった対応が必要です。

 

65歳以上の場合は、基本手当の代わりに高年齢求職者給付金という一時金を受け取れます。

これは年金との調整はありません。

失業給付(60歳以上65歳未満の基本手当)の概要

受給要件

・就職しようとする意思と能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない失業状態にあること

・退職前の原則2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること

受給日数

・原則90日~240日(雇用保険の被保険者期間などによる)

・受給期間は、退職の翌日から1年間(その間に受け取れなかった日数分は受け取れなくなる)

・定年退職や継続勤務が終了した場合、一定期間求職の申込をしないことをハローワークに申し出ると、特例によりその期間分(最長1年間)受給期間が延長される

受給額

・基本手当日額(失業1日あたりの受給額)

賃金日額(退職前6ヶ月の賃金÷180)×賃金日額に応じた45%~80%の率

 年金との調整

 ・60歳代前半に年金を受け取れる人の場合、失業給付受給中は、老齢厚生年金が全額支給停止される

継続勤務や再就職した場合の高年齢雇用継続給付

60歳以上65歳未満で継続雇用や再就職した場合で、月給が60歳時や再就職前の75%未満に下がった等の要件を満たすと、雇用保険から高年齢雇用継続基本給付金または高年齢再就職給付金という「高年齢雇用継続給付」を受け取れます。

 

ただし、年金を受け取っている場合は、在職老齢年金による調整に加えて高年齢雇用継続給付による調整も受け、年金が減額されます。

 

なお、65歳までの雇用確保措置の進展などを踏まえて、2025年4月から高年齢雇用継続給付が縮小される予定です。

  高年齢雇用継続基本給付金 高年齢再就職給付金
受給要件 

 ・60歳以降も継続勤務し、60歳時の賃金の75%未満に低下

・5年以上雇用保険に加入

・引き続いて雇用保険に加入

・60歳以降に再就職し、再就職前の賃金の75%未満に低下

・再就職によって雇用保険に加入

・基本手当を受け取れる日数を100日以上残して再就職

受給額(月額) 継続勤務時の賃金の最大15% 再就職先での賃金の最大15%
受給期間 60歳から65歳になるまで

基本手当の残日数が100~200日未満→再就職時より1年間

基本手当の残日数が200日以上→再就職時より2年間

(受給期間内でも65歳になる月までで打ち切り)

年金との調整

・高年齢雇用継続給付の額(賃金の低下率)に応じて老齢厚生年金が減額される

・高年齢雇用継続給付が高いほど、年金は多く減額される(最大で新賃金の6%相当額)

60歳到達時の賃金が33万円の人が賃金20万円で継続雇用(60歳賃金の60%)

 

60歳の継続勤務時から高年齢雇用継続給付として20万円の15%となる3万円を受給

 

63歳から10万円の厚生老齢年金受給により賃金と合わせて30万円となる

 

ただし、在職老齢年金の制度により28万円を超える2万円の半額1万円が年金から減額(支給停止)

 

さらに、高年齢雇用継続給付により20万円の6%にあたる1万2千が年金から減額(支給停止)

 

結果、合わせて、2万2千円が年金から支給停止されます。