昭和50年代に近畿、中国および北陸の各地域で、主として安山岩砕石を利用したコンクリート構造物で「亀甲状のひび割れ」が発生する現象が発見されました。
その後の調査で、この現象は全国の幅広い地域に分布し、反応性骨材も火山石系、変成岩系および堆積岩系など多種多様なものが存在することがわかってきました。
アルカリシリカ反応性鉱物を含有する骨材(反応性骨材)が使用されていると、コンクリート中の高いアルカリ性を示す水溶液と反応して反応性骨材粒子の周囲にアルカリシリカゲルが生成されます。(図②)
そのアルカリシリカゲルが骨材周囲の セメントペーストより水分を吸収し、反応性骨材が膨張する。(図③)
この反応性骨材粒子の膨張によってコンクリート内の組織の内部応力が発生し、骨材粒子内部にひび割れが発生するだけでなく、それらの周囲のセメントも破壊する。(図④)
これがアルカリ骨材反応と呼ばれるもので、アルカリ骨材反応によるひび割れは「亀甲状」となります。
外観目視上の劣化状況や機能障害(変形・漏水)の調査より、アルカリ骨材反応の可能性があると判断された場合、劣化の程度及び原因を推定するため、必要に応じて調査を実施する。
二次診断は、非破壊または微破壊の方法を原則とし、三次診断は、破壊調査を含めた、より詳細な調査を実施する。
■調査箇所
調査箇所としては、駐車場、ロビー、廊下、階段室、その他の設備室等の共用部分とする。
調査部位の選定にあたっては、「劣化部と健全部」「水の供給を受ける部位と受けない部位」など比較できる箇所とする。
■調査方法
●二次診断においては、詳細な外観目視調査を行い、必要に応じて以下の検査を選択する。
・打診調査
・反発硬度法
・音速法
・ドリル粉末の分析
・析出ゲルの観察
●三次診断においては、コアの採取、はつり調査を行い、以下の分析を実施する。
・コアの表面観察
・岩石鑑定
・ゲル分析
■残存膨張量試験
劣化の進行を予測する場合は、実施することが原則とされています。
建物に現れるひび割れが軽微であっても、コンクリートの残存膨張率が大きい場合は、劣化が進行する可能性が高い。
残存膨張量試験は、コンクリート構造物から採取されたコンクリートコアを高温、高湿および高アルカリなどの一定環境下で促進養生することにより、コンクリートがアルカリシリカ反応で膨張する可能性を調べるテストです。
・塩分分析、アルカリ量分析
・圧縮強度、弾性係数、超音波速度の測定
・調合推定
・化学法、モルタルバー法
視検査による「ひび割れの現状評価」、残存膨張量試験の結果による「劣化進行予測の評価」は次の通りです。
【ひび割れの現状による評価】 | |
評価 | 判断基準(ひび割れの幅) |
レベル0 | ひび割れが無い。または、幅0.1mm以下のひび割れ |
レベル1 | 幅0.1mmを超え、幅0.3mm以下のひび割れ |
レベル2 | 幅0.3mm超えのひび割れ |
【劣化進行予測による評価】 | |
評価 | 判断基準(コアの膨張率) |
レベル0 | 残存膨張率が3カ月材齢で0.05%未満 |
レベル1 | 残存膨張率が3カ月材齢で0.05%未満であるが6カ月材齢で0.05%以上 |
レベル2 | 残存膨張率が3カ月材齢で0.05%以上 |