若い世代が移り住む築50年の団地

マンション管理組合にとって大きな問題「2つの老い」。建物の老朽化と居住者の高齢化が進み、マンションの管理がますます大変になってきます。特に、高度成長期に建てられた公団タイプの団地では「2つの老い」は深刻です。エレベーターがないことや、駅から遠い物件が多いことなどが原因で空き家住戸が増えてます。

 

千葉県千葉市美浜区にある「稲毛海岸三丁目団地」もその一つです。27棟、総戸数768戸の大型団地です。

ただ、広大な敷地に余裕の配置で緑豊かで、最寄り駅から徒歩10分というアクセスの良さがあります。

 

しかし、1968年竣工で築53年で、5階建てながらエレベーターもなく、空き住戸が目立ってきました。過去に建て替えの話もでましたが、合意形成が難しく、結局話しは流れました。

 

建て替えや100年マンション化だけじゃない

「2つの老い」対策といえば、建て替えやバリアフリーも含めた長寿命化(100年マンション)などが言われますが、そんなに大掛かりな対策ばかりではありません。

 

工夫すれば、もっと現実的な対策も考えられます。あなたの住むマンションでも実践できそうな対策を考えるきっかけにして下さい。きっと「ヒント」が思い浮かぶはずです。

リノベーションと住み替え

稲毛海岸三丁目団地では「2つの老い」対策として、空き住戸を若者向けにリノベーションして若い世代を呼び込むことと、高層階に住む高齢者世帯を1階の空き住戸に引っ越しするという住み替え支援を行っています。

リノベーション

管理組合と管理会社、そして地域再生活動を行っているNPO法人の3者が協力して、空き住戸を若者向けにリノベーションして若い世代を呼び込むこととしました。

 

各々の役割はこうです。

①管理会社は空き住戸を買取、若い世代向けにリノベーションして貸し出す

②管理組合は空き住戸情報の提供、賃貸居住者への支援

③NPO法人は地域情報・知見の提供、改修の設計

 

最初の1件は「DIYができる家」としました。シンプルな内装や最低限の設備を設け、木部の釘打ちや塗装などを可能として、DIYに取り掛かりやすい物件としています。

また、NPO法人の協力でDIYのワークショップ等も開催し、SNSやホームページで告知しました。

 

全部で4タイプ7戸のリノベーションが完了し、7戸ともに若い世代が入居しています。

入居後も交流会などを積極的に開催し、団地の環境になじんでもらうようにされているようです。

 

窓が両側にあるから風が抜けて気持ちよい。緑豊かな屋外空間、車通りの少ない静かな環境など魅力です。と好評のようです。

 

住み替え

ある高齢者の一言です。「私の家は5階だから、ずっと住めないの…」

稲毛海岸三丁目団地は5階建てですが、エレベーターはありません。高齢になると5階までの上り下りは相当にきつく、長くはすめないと。

そこで、住み替えに関するアンケートを実施しました。すると

「高齢になってからの階段の昇降に不安がある」「一人住まいなったのでもう少しコンパクトに生活したい」「自宅をリフォームしたいが仮住まいの確保や引っ越しが大変」といった声が多くありました。

 

そこで、管理会社が取得していた1階の空き住戸と高齢者世帯が所有していた住戸を交換して所有権を移転。1階のリフォーム費用は高齢者世帯が負担する。リフォーム中は元の住戸に使用貸借という形で無料で住んでもらう。

 

このような形で住み替えを実現しました。

 

住み替え後は、階段の上り下りもなくなり。訪問介護を頼む時も1階なので気が楽になりました。住み替えて本当によかったと喜んでおられるようです。

 

団地に長く住み続けてもらうためには、家族構成や状態の変化に対応するリフォームや住み替えは必要です。管理組合としても管理会社や地域のNPO法人などと連携して取り組みことは、多くのマンションにも参考になると思います。

居住者名簿の最新化から

まずは、居住者名簿の最新化から始めましょう。

 

空き住戸や賃貸住戸の確認、高齢者世帯住戸の確認などから始めましょう。

 

そうすれば、あなたの住むマンションの現状が把握でき、どんな対策が必要か「ヒント」が見えてくるはずです。