管理組合役員立候補者となるには、理事会承認が必要。管理規約にこんなルールを定めたマンションで、理事会の承認を得られなかった区分所有者が「立候補権」を侵害されたとして損害賠償を求めて提訴しました。
理事長職を断続的に10年以上努めた元理事長ほか3名が訴えを起こしました。
独断専横する区分所有者への対処
私的流用や利益相反的な行為をする理事長役員が、まれですが存在します。例えば、共用部分である屋上スペースなどを私的専有したり、知り合いの業者に発注したり。
そういう人に限って、理事会役員に立候補して半永久的に役員になりたがります。
こういった自分勝手な区分所有者への対処はどうしたら良いでしょうか?
あるマンションの管理規約
輪番制の候補者でなく、立候補の候補者は、「理事会の承認を必要とする」と規約改正しました。改正理由は「立候補者の乱立防止」「理事会の適切な職務遂行」などとしました。
元理事長らは立候補しましたが、理事会は全員一致で承認しない決定をしました。
元理事長らは、この役員5人を提訴して、原告1人につき110万円を支払うよう損害賠償を請求しました。
裁判結果(改正規約条項は1審有効、2審無効)
2018年7月の東京地裁判決では、元理事長らが敗訴。
改正規約条項は、立候補者の適格性等に対する「一次的な判断を理事会の広範な裁量に委ねる趣旨」と解釈。
改正条項が違法とされるのは、理事会が広範な裁量を逸脱・濫用した場合に限られる」とした上で理事会には広範な裁量の逸脱・濫用はなかった、と結論しました。
判決に当たっては、元理事長らが理事会を批判・中傷するなどのビラを全戸配布するなどしたため、理事会が元理事長らと共に円滑に理事会を運営していくことが困難だと判断した。また、総会で原告以外に理事会決定に異議がなかった点なども考慮されました。
2019年4月の東京高裁判決も元理事長らの控訴を棄却しました。
但し、「立候補者を役員候補者として選任するには理事会の承認を必要とする」と定めた規約条項には異議を唱えました。
区分所有法25条では、総会決議以外に「規約で別段の定めが認められている」が、一方区分所有法30条では、「規約は区分所有者の利害の衡平が図れること」とあり、これを害する規約の定めは無効としました。
理事会のみの判断で立候補が認められないとすると、総会で役員としての適格性を判断される機会も与えれなくなる。
理事会の決定は、「与えられた裁量権の範囲を逸脱するもの」で元理事長らの「法的利益を侵害する違法なものだった」と認定しました。
但し、理事会役員に過失はなく、ビラ配布やその内容などから「理事会の適切な職務執行」に支障を生じると考えた根拠はあり、承認しない決定に至った経緯は、やむを得ないとして賠償請求は棄却されました。
理事会での立候補選別はNG
今回の裁判では、1審、2審とも、理事会役員への損害賠償請求は認めれませんでしたが、2審では理事会による承認を必要とする規約条項は違法とされました。
理事会で立候補者を選別することは、「NG」です。
あくまでも、総会による区分所有者全員による信任・選任が必要ということです。
コメントをお書きください
三浦慎一 (火曜日, 28 11月 2023 16:55)
札幌のマンションに住んでおります。
この度、理事会から次期理事の立候補者の公募があり4名が立候補しましたが、4人とも理事会で拒否されました。
理由はこのうち一人でも理事になったら理事会の運営に支障をきたす旨です。
マンションの規約には理事は総会で決めることとなっておりますが理事会で立候補者を拒否することができるのでしょうか?また、その理事会には管理会社の方もいらしたのですがそのまま全員一致で決まったそうです。
対抗することができますか?如何でしょうか?
竹ヶ鼻 (水曜日, 29 11月 2023 14:24)
一般論としては、立候補制度があり、それに従い立候補されたのであれば、理事会で排除するのは、NGです。但し、裁判例にある通り組合運営に著しく支障をきたす行為等が、明確であれば、考慮されるという判断です。明確になければ、おかしいですね。
また、最低でも、理事会で立候補について選考する旨は、規約や細則などに記載されていることが必要です。こういったこともなく
選考するのは、問題でしょう。