何故、高くても売れるのか?

前回お知らせしたように、首都圏の新築マンション平均販売価格はバブル期を超えて「6,702万円」。

東京23区内では、「8,686万円」にもなります。

 

バブル崩壊後最安値だった2002年、東京23区では「4,003万円」でした。2倍以上になっています。

 

給料が上がらない、むしろ下がっていると言われる中、何故、高くても売れるのでしょうか?

いったい、誰が買っているのでしょうか?

 

新築マンションの価格も供給と需要で決まります。

2000年(97,705戸)⇒2020年(27,228戸)

供給面からみるとその大きな特徴は、供給戸数が激減していることです。

 

上の図は不動産経済研究所のデータを元に作成された「首都圏新築マンション供給戸数と販売単価」のグラフです。

 

1990年代後半から2000年代前半、8万戸前後あった供給戸数が、2010年代後半以降においては、半分以下の3万戸前後に激減しています。

 

実績値では、2020年は27,228戸まで落ち込んでいます。

 

新規供給戸数の減少に反比例するように2000年代後半以降販売価格は上昇しています。

寡占化(メジャーセブン)

供給面におけるもう一つの特徴は、寡占化が進んでいることです。

 

メジャーセブンとは、大手不動産会社7社が提携し、新築マンション販売情報と、マンション選びに役立つ様々な関連情報を提供する新築マンションポータルサイトです。

 

①住友不動産株式会社、②株式会社大京、③東急不動産株式会社、④東京建物株式会社、⑤野村不動産株式会社、⑥三井不動産レジデンシャル株式会社、⑦三菱地所レジデンス株式会社の7社が共同で運営を行っており、2000年4月のサイト開設されています。

 

メジャーセブンに参画している7社が2019年に全国で供給した新築分譲マンションは、合計19,398戸にのぼります。これは、2019年に全国で供給された民間マンション戸数70,660戸のうち、約27.5%を占めており、おおよそ3戸に1戸がメジャーセブン7社のマンションである、という計算になります。

 

特に首都圏では2019年のメジャーセブン7社の供給戸数シェアは約44%にも上り(2戸に1戸)、10年弱40%台のシェアが続いています

 

いずれも、資金力のあるところです。

バブル崩壊時の時のように、中堅不動産会社が現金化を急ぐため「安売り」はしません。

給与は下がっているは、本当か?

国税庁による民間給与実態統計調査によれば、2019年平均給与は436万4千円で、2009年を底に徐々に上昇していますが、1999年は461万3千円ですので、5%程下落しています。

厚生労働省による賃金構造基本統計調査によると、2019年平均は30万7千円で、2001年は30万5千円です。ほとんど変化していません。

 

国税庁と厚生労働省の調査結果で、金額が異なるのは不思議ですが、いずれの調査結果でも2000年頃より約20年間平均賃金は上がっていないことがわかります。

 

一方、東京23区の新築マンション価格は、4000万円から8000万円に2倍に値上がりしています。それなのに、何故、売れるのでしょうか?

 

いったい誰が買っているのでしょうか?

実は多くの人の給料は大きく上がっている

統計理論の記述統計では、平均値や中央値、データの分布といったことは極めて重要だが、一方でコーホート分析と呼ばれる同じ時期に生まれた人を時系列で追っていく分析や、同一の個人を時系列のデータとして扱うパネル・データ分析と呼ばれる手法もある。

 

そして、給料が上がっているかどうか、という観点では、全データの記述統計としての平均と、コーホート分析やパネル・データ分析では全く違う結果になる。

1999年(389万円)⇒2019年(615万円)

25~29歳の年収は、1999年に389.9万円だったものが、2009年には365.3万円へ6.3%下落した。しかし2019年には418.7万円となり、1999年と比べて7.4%増となっている。

 

45~49歳の年収は、1999年に602.7万円だったものが、2009年には580.8万円へ3.6%下落した。しかし2019年には615.6万円となり、1999年と比べて2.1%増となっている。

約20年前の1999年に25歳だった人は、2019年には45歳になっているわけで、年収で見ると389.9万円が615.6万円と225.7万円増えて約1.6倍になっている。

 

もちろん、企業規模や雇用形態、職種等によって水準は異なるが、一人ひとりの個人で見れば、20年間で、年齢が上がったことで、給料は大きく上がったことになる。

 

 全体の平均で見れば、確かに20年前から給料はあまり上がっていないのだが、日本企業の給与体系には、正社員を中心にまだまだ年功序列が根強く残っているため、年齢が上がるとともに給料が上がる構造が温存されている。

購入年齢層上昇と世帯年収増加

2019年の分譲マンション購入者の49.1%は40歳以上で、2006年に比較して10%以上増えています。

 

購入者の平均世帯年収は、2006年が709万円で、世帯年収800万円以上の世帯比率は26.3%だった。

 

これが2019年には平均世帯年収が798万円に上がり、世帯年収800万円以上の世帯比率が35%以上に増えている。

 

これは全国平均なので、首都圏に限ればもっと平均年収は高くなるだろう。

東京都共働き世帯年収は1000万円以上

東京で年収1000万円超える人の割合 平成29年度 東京都福祉保健基礎調査「東京の子供と家庭」における主な調査結果によると、東京で年収1000万円を超える人の割合は、共働き世帯の場合が28.4%、共働きではない世帯が17.9%でした

 

日本で、年収1000万円を超える人の割合は全体の4.8%ですが、東京都に限定すると共働き世帯の場合が28.4%、共働きではない世帯が17.9%と高い傾向にあります。これは、東京都内に大企業が集中していること、平均年収が高いこと、共働き世帯が多いことなどが理由として挙げられます。

 

そして、東京都の年収1000万円以上の世帯数は68万4800万世帯となっている。  首都圏で供給される新築マンションは年間3万~4万戸程度にまで縮小しているが、平均6000万円を超える価格であっても、それを購入することが可能な世帯は、首都圏全体では十分に存在していることになる。

 

そして、このことは首都圏で貧富の差が拡大していることを示唆しており、高騰している新築マンションは特殊な市場になりつつある可能性がある。