
築40年、50年の分譲マンションを再生する手法には、「建替え」や「敷地一括売却」などいくつのかの選択肢がある。
現行法では「建替え」の場合は、総会で4/5以上の賛成を必要で、また「敷地一括売却」の場合は、全員の賛成が必要だ。
2021年末時点で築40年以上の分譲マンションが約116万戸、2031年末には約240万戸、2041年末には、約425万戸と急増する見込みである。一方で2024年末の「建替え」実績の累積戸数は約24,000戸で、築40年超えマンション総戸数の2%にも満たない。
国としてもこの状況を放置できない。そこで議論を活発にして、再生を促進する必要があり、今回23年振りに区分所有法の改正に踏み切った。その要点を説明する。
分譲マンション再生の現状

分譲マンションの再生手法には、現状大きく3の選択肢がある。
「建替え」は、現状の建物を取り壊して、建物を新たに立て直す方法だ。もともと5階建て50戸だった住戸数を8階建て80戸などに増やして、分譲会社が30戸分を新規販売することで、建設費の一部を賄う方法があり、住民の負担額がその分軽減される。
それでも最近は1500万〜2500万くらいの自己負担額となっているケースが多いようである。
また、建替えに際して転出と転入の2回の引越が必要となり引越費用や仮住まいの住居費も必要となる。
この建替えには、総会において4/5以上の賛成が必要となる。100人の区分所有者がいれば、80人以上の人の賛成が必要だ。
「敷地一括売却」は、建物ごと敷地を売却するとういう再生手法だ。すなわち住居を失い、管理組合は解散するこになる。
但し自己負担額0で、敷地売却額は敷地権比率に応じて区分所有者に分配される。
この「敷地一括売却」は総会において全員の賛成が必要である。一人でも反対者がいればこの方法は採用できない。
「長寿命化(100年マンション化)」は最近現実的な対応策として国土交通省が推奨している手法である。
建物設備を適切に修繕し、より長く利用できるようにする再生手法だ。自己負担額は500万〜1500万円で、修繕内容で異なる。
建物設備の修繕工事は大規模修繕工事も含めて原則過半数の賛成でよいが、エレベーター設置など大きな変更は3/4以上の賛成が必要となり、大きな変更に影響を受ける住戸があれば、その住戸の同意が必要になる。
いずれの再生手法においても、住居を失ったり、それなりの自己負担額を必要とする。
そして、区分所有者全員の賛成や4/5以上や3/4以上の賛成を、
またエレベーター設置など大きな変更の影響を受ける住戸の同意が必要とする。
この状況を打開すべく、区分所有法の改正がされてようとしている。その要点こうだ。
区分所有法改正の要点

マンション再生に関する合意要件は、緩和の方向で改正されている。
「建替え」に関しては、基本は今まで通り4/5以上の賛成を必要とする。但し下記5つの状況にある時は、3/4以上に緩和された。
・耐震性不足(地震に対する安全性にかかる法令等の基準に適合していないこと)
・火災安全性不適合(火災に対する安全性にかかる法令等の基準に適合していないこと)
・外壁等剥落落下危険(外壁等が剥離・落下することのよりたいs周辺に危害が生ずるおそれがあること)
・給排水設備損傷腐食(給排水等設備の損傷・腐食等により著しく衛生上有害となるおそれがあること)
・バリアフリー化不適合(バリアフリー化の促進に関する法令等の基準に適合していないこと)
「敷地一括売却」に関しては、「建替え」と同じになり、4/5以上または3/4以上となった。
「建物の更新(一棟リノベーション)」という再生手法が新たに設けられた。
建物の更新とは、壁・床・柱・屋根などの主要構造部分について、効用の維持又は回復がなされることが必要で、具体的には耐震性能、耐火性能、給排水管の機能の維持回復などのこと。全ての専有部分が対象となる改修であること。
これも、「建替え」と同じになり、4/5以上または3/4以上となった。
今まで、「長寿命化(100年マンション化)」に関しては下記の通りであった。
・通常の改修工事に関しては、大規模修繕工事も含めて過半数の賛成
・エレベーターの設置など、その形状又は効用の著しい変更を伴う場合は、3/4以上の賛成が必要
・しかも、その変更が専有部分に影響ある場合は、その専有部分住戸の同意が必要
そこで、これを下記の通りに変更した
・通常の改修工事に関しては、大規模修繕工事も含めて過半数の賛成
・エレベーターの設置など、その形状又は効用の著しい変更を伴う場合は、3/4以上の賛成が必要
・但し、耐震性不足、火災安全性不足、外壁等剥落落下危険、給排水設備損傷腐食、バリアフリー化不適合の場合は2/3以上とし、
・その変更が専有部分に影響ある場合は、その専有部分の同意を不要とした
分譲マンション再生の合意要件緩和で再生議論を活発化に
このように、合意要件を全員賛成から4/5以上、4/5以上から3/4以上、4/3以上から2/3以上の賛成で決議できるように緩和された。
建替え(5/4以上または3/4以上)
敷地一括売却(4/5以上または3/4以上)
建物更新(4/5以上または3/4以上)
長寿命化(過半数または3/4以上または2/3以上)
そして、建替えも敷地一括売却も建物更新(一棟リノベーション)も同じ合意要件となったことで、再生の選択肢が広がった。
一般的に分譲マンション再生の合意成立には、最短でも10年はかかると言われている。
築40年以上でなくても、築30年くらいから、築50年、60年、70年くらいまでのビジョンの共有を図る努力をすることを勧めたい。
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