管理費・修繕積立金関連

なんと言っても組合運営にとって、管理費・修繕積立金は最重要課題です。区分所有者の負担を出来得る限り軽くして、マンションの日々の運営管理を行い、かつ、建物・設備の修繕及び更新を行っていく。

そのためには、割高・無駄な支出を抑えること。

管理費・修繕積立金等の滞納を防ぐ仕組みが必要です。


割高・無駄な支出を抑える仕組みとは?

 

割高・無駄な支出を抑える最も確実な方法は、必ず3社以上から見積を取ることです。

しかも、管理組合独自に直接見積依頼する事、管理会社経由ではあまり意味がありません。

  

支援の背景

  • 支出削減を目的に、複数の見積提出をさせている管理組合がありました
  • 但し、あまり効果はありませんでした
  • 見積金額に、それほど大きな差はありませんでした
  • 管理会社は発注先の本命を決めていて、形式的に見積提出させている場合が多い

支援の内容

  1. 工事発注等の場合、3社以上の見積取得を行うことを理事会基本方針とした
  2. 1社以上は、管理組合が直接見積依頼すること
  3. 工事仕様(何がして欲しい)は、理事会で決定すること
  4. マンション管理士が見積依頼先を探すことを支援した
  5. マンション管理士が見積内容比較表を作成した
  6. 理事会にて、発注先を決定した

 

支援のポイント

 

  • 管理組合独自に直接見積依頼したところに発注した場合、管理会社の協力は得られません。
  • 管理組合が直接、発注先とやりとりする覚悟がいることを理解してもらう。
  • 理事会役員等に負担がかかることを覚悟してもらう。

 


駐車場使用料は修繕積立金会計に

駐車場使用料年間約600万円の全額を管理費会計に組み入れていた。これを管理費会計200万円、修繕積立金会計に400万円組入ることに変更した。

駐車場使用料を本来の目的である日常の保守点検費用と近い将来に訪れる機械式駐車場の全面更新費用のために積み立てるようにした。

支援の背景

  • 管理会社から2年前に値上げしたばかりなのに4度目の修繕積立金の値上げ提案があった。
  • 理由は、長期修繕計画再作成の結果、修繕積立金の不足見込額が増大したとのこと。
  • 度重なる修繕積立金の値上げ提案に対して、不信を感じた理事長はマンション管理士に相談した。

支援の内容

  1. 長期修繕計画内容を精査した、割高な項目も確かにあったが、漏れている項目もあった
  2. 漏れている項目として、機械式駐車場の更新費用があった
  3. 管理会計及び修繕積立金会計の決算資料を精査をした
  4. 駐車場使用料年間約600万円全額が管理費会計に組み込まれていた。管理費会計は直近5年で、平均して年間約150から300万円の余剰金が発生していた
  5. そこで、駐車場使用料のうち年間400万円を修繕積立金会計に組み入れる方針を決定した
  6. 修繕積立金の値上げ案は保留とし、長期修繕計画作成を第三者に依頼することにした
  7. 一方、管理費会計支出内容を精査して、予算ベースで年間100万円削減した
  8. また、機械式駐車場の稼働率を上げ収入を増やすため、不人気な区画や2台目使用の場合の利用料の値下げ案を総会議案として提案した
  9. 管理費会計で不足する分は、管理費を値上げする案を総会議案として提案した

支援のポイント

  • 機械式駐車場の部品交換代を含む長期保守費用がトータル7500万円、1パレットあたり100~150万円かかる更新費用 60パレットで約6000万円~9000万円必要となること
  • 駐車場使用料年間600万円全額が管理費会計に組み込まれており、この結果、余裕が生まれ管理費会計の支出チェックが甘くなっていること
  • 駐車場使用料は本来、駐車場保守更新のために使われるべきものであること
  • 上記を理事会役員と情報共有したこと
  • 組合員にも資料全戸配布及び説明を開催し情報共有したこと
  • 安いと思っていた管理費は、実は駐車場使用料で補っていた事を知った
  • 管理費の値上げの理解を得るために、管理費会計の支出チェックを厳しくし、将来的には定期保守費用を除いた残り全額を修繕積立金会計に繰り入れるように方向づけしたこと

保険の見直しで保険料を150万円削減

大手損保会社のマンション総合保険契約を解約し、中堅損保会社のマンション総合保険契約に変更することで、同一保障内容で保険料を150万円/5年を削減できた。

この削減できた保険料で未加入だった地震保険に加入した。

支援の背景

  • マンション総合保険の保険料が15%~20%値上げされるニュースが流れた(2018年)
  • 管理費会計の支出内容の見直しを行っていたマンションから、マンション管理士に相談があった

支援の内容

  1. 日新火災海上が販売している「マンションDr.保険」を紹介した
  2. この保険は管理状況の診断を受けて、管理品質レベル応じて保険料が決定される
  3. 他社の保険は築年数に応じて保険料は決定され、高経年であるほど高額となる
  4. 管理状況の診断を受けて、Aランクの判定を受けた(上から2番目の評価)
  5. 加入中の保険会社見積約320万円/5年に対して、同一保障内容で170万円/5年と150万円削減
  6. 削減できた費用で、未加入だった地震保険に加入することとした
  7. 加入中の保険4年目で中途解約した(損害保険の場合、未経過保険料は返金される)

支援のポイント

  • 診断を受けるに際して、漏水事故歴、建物設備修繕履歴、総会議事録など各種書類の整理を行ったこと
  • 日新火災海上の代理店となっている管理会社は少ない。このマンションの管理会社も代理店ではなかったこと
  • 従って、事故発生時の窓口として管理会社は関与しない、組合が日新火災海上代理店と直接連絡を取る必要がる
  • 但し、その負担を考慮しても費用削減効果は大きく、未加入だった地震保険に加入した

管理費値上げして、支出内容を厳しくチェック

駐車場使用料を全額、管理費会計に組み入れたところ、修繕積立金会計に組み入れ先を変更した。その結果、不足する管理費会計を補うために管理費の値上げを総会に提案した。

理事会役員及び組合員の管理費会計支出内容への関心が高まり、チェック機能が強化された。

支援の背景

  • 駐車場使用料全額を管理費会計に組み入れていた。(組合員は認識していない)
  • その額は管理費会計の60%近くを占めていた。
  • 管理費は、60円/㎡(4200円/70㎡)と全国平均値の半分以下で管理費の安いマンションと組合員の自己認識があった
  • 駐車場使用料を修繕積立金会計に組み入れることにした
  • 不足分を管理費を値上げすることとした

支援の内容

  1. 説明会を幾度か開催
  2. 臨時総会開催するも特別決議議案として提案するも否決
  3. 管理費会計の支出内容を再度チェックし、予算削減
  4. 駐車場使用料の一部値上げと管理費の値上げ幅を圧縮した議案を再度、定期総会に提案しようやく可決

支援のポイント

  • 駐車場使用料の組み入れ先変更の結果、管理費値上げとなることの理解を得ることは容易ではない
  • 管理費・修繕積立金等の値上げ議案承認は普通決議としない(過半数可決決議)
  • より多くの人の賛同を得るよう急がず、粘り強く行った

管理費等会計運営細則の制定

理事会役員のメンバー交代があったとしても運営内容が振れることがないようにする。管理費等会計の運営方針などを文書化した。

支援の背景

  • 管理費会計、修繕積立金会計に対する運営方針はなかった
  • 管理会社の提案する予算を毎年承認するだけとなっていた

支援の内容

  1. 管理費等運営細則案を作成し、理事会に提案した
  2. 理事会にて検討後、組合員向けに説明会を開催した
  3. 通常総会に議案提案し、可決された

支援のポイント

  • 修繕積立金は、将来的に備えて、蓄えることを基本方針とした
  • 管理費会計は、無駄を省き、コスト削減を基本方針とした
  • 計画修繕費は修繕積立金会計から支出、臨時修繕費は、一般会計予備費から支出など収入支出項目を定義した
  • 駐車場使用料など各種使用料の組み入れ先及び比率を定めた
  • 管理費会計において、剰余金発生の場合の処理方法を定めた

管理費等督促細則の制定

理事会役員のメンバー交代があったとしても督促対応が振れることがないようにする。督促手順を文書化した。細則は全戸配布して、滞納に対する注意啓蒙を行った

支援の背景

  • 管理会社任せで、管理費等の滞納者に対する督促対応にバラツキがあった
  • 滞納者に対する「駐車場契約解約予告通知」など規約・細則に記載あっても行われない
  • 1年近い、長期滞納状態が常態化している滞納者もいた

 

支援の内容

  1. 管理費等督促細則案を作成し、理事会に提案した
  2. 理事会にて検討後、組合員向けに説明会を開催した
  3. 通常総会に議案提案し、可決された

支援のポイント

  • 滞納発生1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目・・・12ヶ月目の督促内容を文書化した
  • 滞納時の遅延損害金の利率と請求タイミングを明確化した
  • 駐車場契約解約通告を無視した場合の罰則金徴収規定を盛り込んだ
  • 滞納発生12ヶ月以上経過の場合、氏名公表もあり得る規定を盛り込んだ