災害対策

東日本大震災を受け、住まい選びに際して地震や津波・洪水などに対する安心感を求める人が増えています。

 

また、自治体の中に、マンションを地域の防災対策に役立てたいというニーズがあることから、マンションそのものを防災拠点に指定するケースも増えています。

 

東日本大震災では、65歳以上の高齢者の死亡が6割であり、障がい者の死亡率は、被災地域民全体の約2倍であったとの報告もあります。

 

一般的に災害に強いマンションが居住者はもちろん、地域住民の避難・防災拠点として機能することが求められています。

耐震診断・改修実施状況

平成25年マンション総合調査によると、

 

旧耐震基準に基づき建設されたマンションのうち

・耐震診断を行った管理組合が33%

 

 

耐震診断を行った管理組合のうち

・耐震性がないと判断された管理組合が32%

 

耐震性がないと判断された管理組合のうち

・耐震改修工事を実施した管理組合が33%

 

と非常に遅れている状況があります。

 

 

全国には、旧耐震基準で建設された分譲マンションが100万戸以上あると言われています。

これらのマンションは当然に築年数が古く、そこに住む住人も高齢者世帯が多くなります。

 

そうすると、高額な耐震改修費用を負担することは困難で、不安であるが、何も手をつけられないという状態になっています。

 

大規模災害への対応状況

避難・防災拠点として機能するためには、ハード面としての設備だけでなく、ソフト面としてのより良いコミュニティーを形成する必要があります。

 

平成25年マンション総合調査によると、前回実施の平成20年より防災意識は高まっているようです。

 

しかし、「防災訓練を実施している」は、40%弱しかなく、一方減少したとはいえ、「何もしていない」が30%弱もあります。

 

「災害対応マニュアル」「防災用名簿」の作成など急ぐべきものが多数あります。

 

管理組合としての準備

●管理組合の防災体制の整備

 

理事会を中心とした、災害発生時の対策チームを編成します。

災害発生に備えての避難集合場所の選定や、防災備品の備蓄なども行います。

また、管理規約にも非常時の条項を定めておくと、いざという時の対応がスムーズです。

 

  

●所有者、居住者の名簿整備

 

安否確認や緊急連絡のための防災用の名簿を作成します。

高齢者や障碍者など災害発生時に手助けが必要な方の把握にも役立てます。

所有者、居住者の同意が必要です。保管及び非常時の使用ルールも決めておきます。

 

●防災マニュアルの作成

 

災害発生時の避難手順や安否確認手順、関係機関への連絡手順などを作成します。

理事会役員などが帰宅困難な場合の対応方法やマンションの設備等の特性も考慮して作成します。

 

●防災訓練の実施

 

防災マニュアルを整備したら、防災訓練を定期的に実施します。

消防署等に相談すると、防災訓練への協力やアドバイスが得られます。

 

●管理会社との協力体制の整備

 

突然の地震、被災等で管理組合が機能しないことも想定し、管理組合と管理会社の間の非常時の業務に関する取り決めを決めておきます。

①管理組合と管理会社の役割分担

②非常時対応の費用負担

③非常時の管理費等の徴収方法 など

 

●竣工図等の保管

 

建物や設備が被害を受けた時、竣工図等があると迅速に復旧工事を行えます。

図面や書類の所在、保管場所を明らかにしておきます。

また、竣工業者、設備業者等の連絡先なども同じです。

管理組合としての災害発生時の対応

●居住者の安否確認と救出

 

建物全体を巡回して居住者の安否を確認します。高齢者、障碍者など手助けが必要な方などを優先します。

応答のない場合は、管理組合の判断のもとに住戸内入って確認します。

災害時のルールとして、住戸内入ることを了解を得ておくようにします。

 

●救助活動、応急手当

 

けが人発生時は、集会室、エレベーターホールなどに安全なスペースを確保し負傷者を誘導します。

軽症者は応急手当を施し、重傷者は消防署に連絡します。

医療機関のリストも作成しておきます。

 

●ライフライン、立ち入り禁止の措置

 

電気・ガス・水道・電話等のライフラインが停止している場合、ガス漏れや漏電等による二次災害発生を防止するため、使用禁止の徹底と電気ブレーカー、ガスの元栓を止めるよう呼びかけます。

 

また、理事会役員を中心に建物・設備の被害状況を点検し、必要に応じて設備の使用禁止、建物内への立ち入り禁止の応急措置をとりましょう。

 

エレベーター、機械式駐車場は正常稼働を確認できるまで使用禁止とします。

状況によりますが、オートロックも解除し、開放状態にしておきます。

 

●衛生面

 

停電や排水管の破損等でトイレが使用不能となったり、ゴミの収集が停止することがあります。

衛生状態の悪化を防ぐために仮設トイレを設置したり、仮設のゴミ置場を設置したりします。

 

●備蓄品の配給

 

備蓄していた食糧・飲料水を配布ルールに従い、公平に配ります。

高齢者や子供、病気の方を優先して配給するなどの配慮も必要です。