修繕積立金の値上げ・・・ちょっとその前に

よくあるパターンの大規模修繕工事必要額と修繕積立金累計額のグラフです。

このMマンション(総戸数37戸・築13年)では、3回目(築36年目)の大規模修繕工事の時には、1億2,300万円が不足する見込みであると試算されています。

 

グラフにあるように1回目より2回目、2回目より3回目の大規模修繕工事の方が工事範囲が広がり、工事内容が複雑化していきますので、必要額も増えていきます。

 

築30年頃には、給排水管、エレベーターや機械式駐車場などの設備系の更新工事なども計画されています。

 

このような事情で、修繕積立金会計の不足額が急激に増大していきます。

 

管理費と修繕積立金

マンション管理新聞社が半年に1度実施している「管理費等初期設定調査」によれば、2017年上半期に新規分譲されたマンションの管理費と修繕積立金の㎡当たり金額は、

 

●管理費:178円/㎡

●修繕積立金:93円/㎡

 

70㎡換算すると、管理費は12,460円 修繕積立金は6,510円だそうです。

初期設定されている修繕積立金が明らかに低すぎることがわかります

この低すぎる初期設定額が、数年ごとに値上げする原因の一つとなっています。

 

これは、住宅ローン・管理費・修繕積立金の月々の支出額をできるだけ低くして、分譲会社にとって売り易くする戦術です。

 

管理費は、分譲後系列の管理会社の収益源となるので、高めに設定したい。一方修繕積立金が必要とされるのは、12年後となるので、売り易くするするために、低く設定しているのです。

  

駐車場使用料は何に使われているのか?

駐車場使用料は、駐車場の維持修繕のために使われているものと思いがちですが、多くのマンションではそうではありません。

 

マンションには、一般会計と修繕積立金会計という2種類の会計(財布)があるのですが、駐車場使用料などは、一般会計に繰り入れされているのが、ほとんどのマンションです。

 

一般会計と修繕積立金会計

一般会計とは、管理員業務、日常清掃、定期清掃などの清掃業務、エレベーターや機械式駐車場などの各種点検点検業務、理事会・総会などの管理組合運営支援など管理会社への業務委託費や共用部の水光熱費などのための会計(財布)です。

 

一方、修繕積立金会計とは、12年~15年毎に行われる大規模修繕工事や築30年前後に行われるエレベーターや機械式駐車場の更新(取替)工事などのための会計(財布)です。

 

駐車場使用料+管理費=一般会計

駐車場使用料などの各種使用料の一般会計への組入れ率は、マンション(管理組合)によって異なりますが、多くの管理組合では、全額を組み入れています。

 

組み入れ額は、駐車場契約台数や契約料金で異なりますが、年間で数百万円~数千万円となります。

 

本来であれば、機械式駐車場の維持修繕や将来の更新(取替)のために修繕積立金として積み立てて置くべき駐車場使用料が、一般会計として毎年消費されています。

 

ここで問題なのが、毎月納める管理費だけではできないことも、駐車場使用料のおかげで、余裕でできてしまう。

 

厳しくあるべき予算チェックなど行われずに、予算承認されてしまうことです。

 

修繕積立金の値上げの前に・・・

本来は、駐車場使用料などの全額を修繕積立金会計に繰り入れたのですが、いきなりそうすることも非現実的ですので、駐車場使用料などの半額程度を修繕積立金会計に繰り入れることを方針決定します。

 

そうすると当然、今までの一般会計予算では、収入不足となるので、一般会計の支出予算を見直します。

 

 

無駄はないのか、もっと安くできないのか? 管理会社と交渉を行います。

 

こすることで、安易に修繕積立金の値上げを行わずに済みます。