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管理員・清掃員の休業所得補償

コロナの影響で管理員を休ませたのだが…

先日、自主管理されているマンション管理組合の役員の方から、お電話でご相談を受けました。

 

緊急事態宣言発令に伴い、管理組合が直接雇用している管理員を休ませた。休業中の管理員の給与は保障してやりたい。この場合、管理組合が国から給付金のようなものを受け取る仕組みはありませんか?

 

と言うような内容でした。

 

管理組合は雇用調整助成金は使えない

多くの管理会社でも管理員・清掃員の勤務時間を短縮したり、休業させたりしています。

 

管理会社は「会社都合」で雇用している管理員などを休業させた場合は、(賃金日額の60%以上×休業日数)を休業手当として支払う必要があります。

 

60%以上なので、80%でも100%でもOKです。 

 

これは労働基準法に定められています。

今回の緊急事態宣言に伴い休業させる場合は、「会社都合」となるのか、自然災害などと同じように不可効力となるのか議論が分かれるところですが、厚生労働省は、労働者が不利益とならないように配慮するように行政指導しています。

 

雇用調整助成金とは、経済上の理由で、事業活動の縮小が余儀なくされた事業主に対し、雇用を維持してもらう目的で、休業手当の一部を国が助成する制度です。支給対象は個人でなく事業主となります。これは以前からあった制度ですが、新型コロナの感染拡大で、特例措置として、要件が緩和されました。例えば、従来は「売上」や「販売量」などを示す生産指標が「3カ月で10%以上の低下」が条件だったのが「1ヶ月で5%以上低下」とハードルが下げられています。

 

ですが管理組合が直接雇用している場合は、「売上」も「販売量」もそもそもありませんから、支給条件をクリアできません。従って、雇用調整助成金の支給申請はできないことになります。

 

雇用契約と請負契約・委託契約の違いについて

ところで民法には、雇用契約、請負契約、委託契約と3種類あります。

管理会社や管理組合が管理員と契約する時ですが、同じ「契約」でも中身は大きくことなります。

 

雇用契約とは、雇われる者が、雇い主に対して労務に従うことを約束し、雇い主が、その対価として報酬を支払うことを約束することで成立する契約です。発注者からの指揮命令を受けることがポイントとなります。

 

雇用契約であれば、労災保険・雇用保険に加入しなければなりません。

また場合によっては、健康保険・厚生年金保険などは加入しなければなりません。

 

請負契約とは、何かを依頼して、それが「完成」した場合に報酬を支払うのが「請負契約」です。完成品が存在しなければ「契約不履行」となり、代金(報酬)は支払いません。発注者からの指揮命令を受けないことがポイントとなります。

 

委託契約とは、委託者が業務の処理を依頼し、受託者が引き受けることで成立する契約です。

ポイントは「仕事の完成は、求めてない」ところです。一定期間、何かを行なってもらったことに対して代金を支払います。

 

管理組合が管理員業務を発注する場合

管理組合が管理員を直接「雇用契約」する場合は、管理組合は事業主となります。

この場合、労災保険や雇用保険に加入しなければなりません。

勤務条件にもよりますが、健康保険や厚生年金保険などにも加入しなければなりません。

また、今回のように休業させた場合などは、労働基準法にのっとり休業手当を支払う義務を負うことになります。

 

このように、管理組合が管理員などを直接雇用するのは、かなりハードルが高いものとなります。

 

管理組合が管理員業務を「請負契約」や「委託契約」とすれれば、これらは該当しなくなります。

 

但し実態において、管理組合から指揮命令を受けて仕事している、時間拘束している。などあれば名目上「請負契約」や「委託契約」としても労働基準監督署は「雇用契約」として扱います。

 

ですから、自主運営の管理組合でで管理員業務を発注する場合は、直接契約でなく、派遣会社などに発注するのが良いと思われます。