もはや異常でない「異常気象」

管理組合と防災対策

2019年10月の台風19号による豪雨では、首都圏をはじめ各地に大きな被害をもたらしました。一部のマンションでは浸水によって電気系統が動かなくなり、エレベーターや給水設備等のライフラインが一時的に使用不能となったために、生活が困難になるケースも見られました。

 

このような災害に遭遇した時のために、管理組合として日頃から災害に備えておくか否かが、いざという時の明暗を分けることになります。

 

災害から居住者の生命、身体および財産を守ることは管理組合の重要な役割の一つです。また災害が発生した時にマンションの被害復旧のための対応を行うことも管理組合の役割となります。

管理組合が行うべき防災対策

標準管理規約32条(業務)には管理組合が行う業務について規定されており、12号には防災に関する業務が明記されています。

 

国土交通省公表の「マンション管理標準指針」では、まず消防法に定められている事項を確実に行うことが重要であるとしています。具体的には

①防火管理者の選任

②消防計画の作成および周知

③消化・通報・避難の訓練

④消防設備の点検

 

以上は管理組合が行う防災業務として「標準的な対応」として必要最小限のものとなります。

 

「望ましい対応」としては、

①災害時に必要となる道具、備品、非常食類の備蓄

②高齢者等が入居する住戸を記した防災用名簿の作成

③災害発生時における居住者の安否確認体制の整備

④災害発生時における被害状況・復旧見通しに関する情報収集・提供体制の整備

が挙げられています。

 

マンション総合調査結果と実態の乖離

平成20年の調査によれば、管理組合の災害への対応状況として

 

①特になにもしていない・・・38.9%

②定期的に防災訓練を実施している・・・33.3%

 

でしたが、平成30年の調査によれば

 

①定期的に防災訓練を実施している・・・44.1%(↑)

②特になにもしていない・・・23.4%(↓)

 

と管理組合の災害に対する意識は高まっていることが分かりますが?

 

私の知る範囲では、

 

防火管理者の選任は形式的で、十数年同じ人が選任されていて、名前だけで具体的な役割は担っていないケースが多いですし、

 

消防計画の作成や周知に関しては、見たことがない、しらない居住者が殆どではないでしょうか?

 

消火・通報・避難の訓練に関しては、実施していないところも多く、実施しても参加者は極端に少ないのが現状ではないでしょうか?

 

消防設備の点検は法律で義務化されていますので、実施されているところが殆どですが、不備指摘事項について即対応していないところが多いのではないでしょうか?

標準的な対応の見直し

標準的な対応(必要最小限な対応)の充実が喫緊の課題です。

 

理事会とは別に防災専門委員会を立ち上げて、その中で防火管理者を選任して、実質的な責任者として担当頂くこと。

 

消防計画を専門家の協力を得て作成し、居住者向け説明会の開催などして周知活動に力を入れること。

 

消火通報避難訓練も内容を工夫して多くの人が参加してもらえるものとすること。

 

不備指摘事項については、万が一のことを考慮して、点検実施後は常に検討議題として早期対応を図ること。

 

以上を防災はじめの一歩として取り掛かることが非常に大切です。