ようやく動き出したスラム化回避マンション政策(その②))

2029年、築50年超分譲マンション92万戸へ。あと10年足らずです。ようやく動き出したスラム化回避のマンション政策(国土交通省)。その方向性を知り、いち早く準備を始めることは、あなたの住むマンションのスラム化を防止し、資産価値を維持・向上するファーストステップとなります。

 

その背景として分譲マンションが直面する7つの課題について確認しておきましょう。


①区分所有者の高齢化、非居住化、担い手不足

日本における高齢化の進展は急激に進んでいます。

 

2025年には65歳以上の人口が、3650万人強となり、全人口の30%強となります。

 

その内、75歳以上の後期高齢者の人口が、2,200万人弱となり、全人口の20%弱となります。実に5人に1人が75歳以上となります。

 

分譲マンションでも同じで、2018年マンション総合調査では、49.2%が世帯主が60歳以上でじた。

 

築年数の古い高経年マンションほどこの傾向は強く、昭和54年以前建築のマンションでは、60歳上は77.8%、約8割でした。

 

このことは、区分所有者の非居住化(賃貸・空き住戸化)が進行し、管理組合役員の成り手不足します。そして、総会の運営・決議が困難となり、維持修繕に必要な修繕積立金を確保できな等の問題に直結します。

 

 

②大規模化・複雑化

1997年の建築基準法改正(容積率緩和)以降タワーマンションの建設が進み始めます。そして、2003年頃より急激に増加します。

 

タワーマンションに象徴されるようにマンションの大規模化や設備の高度化、商業施設等の複合用途化等が進みます。それに伴い、マンション管理の専門家・複雑化が進みます。

 

マンションの規模が大きくなるほど総会への出席率が下がり、所有目的・価値観・経済力の違いなどで区分所有者の合意形成の困難さがなお一層増大しています。

 

③中古マンション市場の拡大と管理情報不足

分譲マンションストック数の増大に伴い、中古マンションの流通量は、過去30年間で1.76倍になりました。【住宅土地統計調査(総務省)】

 

◎45,000戸(1989年)⇒79,000戸(2018年)

 

マンション管理状況を把握できないまま購入している現状であり、中古マンションの管理状況に対するニーズが高まっています。

 

④修繕積立金の不足

計画期間25年以上の長期修繕計画に基づき修繕積立金の額を設定している管理組合の割合は約半数に留まっています。

 

また、現在の修繕積立金の積立額が計画値に対して不足している管理組合は34.8%となっています。

 

⑤建替えにおける事業採算性の低下

マンションの建替えは累積件数で、254件に過ぎず、実現へのハードルは非常に高いものとなっています。

 

建替え実現事例の従前従後の利用容積率比率は低下傾向にあります。

 

建替え後の新規住戸を販売して、建設資金に充当するという手法は利用しずらくなり、区分所有者の経済的負担が増し、建替え事業の成立性がより厳しくなっています。

⑥新耐震基準マンションの高経年化

新耐震基準で建築されたマンションのうち、築40年以上となるものが2023年末には34万戸、2038年には263万戸になると見込まれています。

 

今後は、旧耐震基準だけでなく、新耐震基準で建築されたマンションも高経年が進み、その再生も課題となってきます。

 

⑦大規模団地の高経年化

マンションストックの内、団地型マンションは約1/3です。

 

今後は大規模な団地型マンションの再生手法も検討する必要性が高まってきます。


以上のようなマンションの現状と課題を踏まえて、2020年6月「マンション管理適正化法」と「マンション建替え円滑化法」が改正公布されました。

 

その方向性としては、

①マンションが高経年化して行く中、できるだけ長く活用するに務め、適切に維持管理する

②維持管理が困難な場合は、居住者や周辺の居住環境悪化などの問題が生じる前に、速やかに「建替え」や「(敷地)売却」により、建物の更新を行う

 

というものです。次にその具体的な内容について見ていきましょう。