全国で約1,300棟
容積率や日影規制を緩和した平成9年(1997年)の建築基準法改正によって都市部を中心に開発が加速し、棟数は全国で1300を超えた。
新築ラッシュが今も続く一方で、築年数が経過し、管理組合と管理会社との関係性に亀裂が生じたマンションも少なくない。
激増する管理辞退
このブログでも2021/4/30にお伝えしましたが、管理会社による管理辞退が増えています。
ある大手管理会社において、今年3月末までの1年間で契約打ち切りとなった件数は、戸数ベースで3万7千戸を超え、4年前の6・6倍に伸びてます。
背景には、管理人や清掃員の人件費などが高騰しても、管理委託費の値上げを組合側に受け入れさせることが簡単ではなく、管理委託業務だけでは十分な利益を得ることが困難という事情があるようです。
管理会社では近年、売り上げ拡大よりも利益を重視した経営にシフトしており、新築時から続いた管理委託契約を打ち切る事態も起きています。
管理会社の収益構造
9/23のこのブログでもご紹介しましたが、管理戸数No 1の日本ハウジングという会社の決算資料では、約4割が営繕工事売上でした。
NPO法人マンション管理支援協議会のデータでは、ある財閥系大手管理会社では総売上高約442億円のうち約69%が修繕工事の売り上げで占められています。中堅デベロッパー系の会社では51%でした。
このように、管理会社において、工事売上は、4割~7割を占めます。
大規模修繕工事が別会社に発注
冒頭に紹介した西日本にあるマンションでは、1回目の大規模修繕工事が計画され、管理会社は2億3千万円の予算を提示しました。
これに対して管理組合理事会は、独自に元請け業者を公募。
管理会社とは別の業者に約1億8千万円で発注する見通しとなったそうです。
前後して2021年春、理事会に反発した住民による役員の解任騒動が勃発。
結果的に役員の残留が決まったが、直後の2021年5月に8月末で管理委託を終了する通告がされたそうです。
想像ですが、管理会社としては、受注を期待していた大規模修繕工事が、管理会社との調整も十分でないなか、別業者へ発注されることになったことが管理辞退申し入れのきっかけとなった原因ではないでしょうか?
3ヶ月前通告
国土交通省が公開する管理委託契約の指針「標準管理委託契約書」には、管理会社と組合側の一方が3カ月前までに解約を申し入れれば契約を終了することが可能、との条文が設けられています。
多くの個別契約にも採用される条文ですが、突然、契約の終了を通告されたら管理組合が他社を探すには、時間が足りないと思います。
ある管理会社の幹部は、「こうした『3カ月前』ルールを背景に契約終了をちらつかせ、管理組合側に厳しい条件を受け入れさせることもある」そうです。
カスハラ(カスタマーハラスメント)
一方、管理会社の担当者が住民側に無理難題を突きつけられる『カスタマーハラスメント』も増えています。
夜中にクレーム処理に追われたり、怒鳴りつけられたりして、心身をすり減らすこともある。
業界は担当者不足に陥っており、こうした理不尽な行為が契約先の『選別』につながっていることも知っておく必要があります。
管理組合理事会の目指すべきものは
理会社は営利企業であるため、もうけがなければ当然離れていってしまいます。
そのため、管理組合も「管理会社にもある程度もうけさせる」という考えを持っていることが大切です。
あくまでも管理委託費は適正な金額で契約しつつ、たとえば大規模修繕工事は他社との相見積もりにするが、小修繕工事は管理会社に発注するなど、バランス感覚を持った付き合い方をしていくべきです。
しかし、管理会社に100%おまかせで、なんでもかんでも言う通りにすることは、いけません。適度な緊張関係を保つことが大事です。
管理会社の“もうけ”も考慮しながらバランス感覚を持った管理組合を目指す
また、お客様意識が高すぎて、なんでもかんでも、管理会社にやらせようとい考えは、理事会だけでなく、組合員も改める必要があります。
住民のマナー違反や住民間のトラブルには、自分たちのコミュニティで解決するとういう意識が必要です。
問題解決力の高い管理組合を目指すことも忘れてはいけません。
外部の専門家の活用を
本来、管理組合や理事会は「将来、こういうマンションを目指そう」というビジョンを持って、継続的に運用できる仕組みを作るべきでです。
その仕組み作りや支援を外部に求め、マンション管理士などの専門家を活用することも選択肢の一つとして考えるべきです。
知識・経験もなく、仕事を抱え、なにより時間のない区分所有者たちで、このようなことを考え、継続的に取り組むことは、かなり困難なことです。
国土交通省は「マンションの管理の適正化に関する指針」において、「外部の専門家の活用」を可能とする改定を行い、それを受けて「外部専門家活用ガイドライン」を公表しています。
ガイドラインは「区分所有者の高齢化などによる理事や役員のなり手不足」や「マンションの高層化・大規模化などによる管理の高度化・複雑化」といった、管理組合が抱えるさまざまな課題に対し、外部の専門家を活用することで解決策を見いだすことを目的に制定されたものです。
いつまでも住みやすいマンションを維持し、しかも資産価値をアップする。
そのために、管理組合や理事会は積極的に外部の専門家を活用する。
管理会社に“食い物”にされることなく、かつ管理会社が適正な利益を得ることも考慮できる、バランス感覚のある組織を目指していくことがとても大事です。
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