コンクリートの劣化

コンクリートとは、セメント、水、細骨材(砂)、粗骨材(砂利)及び必要に応じて混和材料を構成材料としてこれらを練り混ぜたものの事です。

 

モルタルは、コンクリートから粗骨材(砂利)を除いたものの事です。



コンクリートの特徴

■コンクリートの長所

 

 ①圧縮強度が高い

 ②剛性が高い(物体に力を加えて変形しょうとする時の抵抗性)

 ③成形性が良い

 ④経済性に優れいる

 ⑤材料を得やすい

 ⑥耐火性がある

 ⑦鋼材との相性が良い

 

■コンクリートの短所

 

 ①引張強度が小さい

 ②ひび割れが生じやすい

 ③重量が思い

 ④解体・廃棄が困難

 ⑤まだ固まらない状態の性質が施工性に大きく影響する



そして、コンクリートの長所を生かし、短所を補いつつ、鉄筋の発錆や熱による強度低下など鉄筋の短所を補ったものが、「鉄筋コンクリート造(RC)」、「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)」です。


躯体コンクリートの劣化現象

丈夫な「鉄筋コンクリート造り(RC)」「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)」すが、築年数が経過するほどに、コンクリートも徐々に劣化していきます。

 

コンクリートの劣化現象は、一つの劣化現象が他の劣化現象の原因となるように、相互に密接な関係を持っているために、現れ方はたいへん複雑になっています。

 

■コンクリートの中性化

 

コンクリートが空気中の炭酸ガス、水中に存在する炭酸、その他の酸性のガスあるいは塩類の作用によりアルカリ性を失っていく現象です。

 

■鉄筋の腐食

 

コンクリートの中性化やひび割れ、侵食性化学物質、漏れ電流等によって鉄筋が発錆する現象です。

 

■コンクリートのひび割れ

 

コンクリートの乾燥収縮、温度変化の繰り返し、アルカリ骨材反応、凍結融解作用の繰り返し(凍害)、施工不良、水和熱、鉄筋腐食、火災ひび割れ、構造ひび割れ(曲げ、せん断)、過荷重(大たわみ)、地盤・基礎の不同沈下などを原因として発生するひび割れです。

 

■漏水

 

水が存在する環境下において、水が部材断面を透過してしみ出るか、あるいは部材内部及び部材間の間隙部分を通じて露出する現象です。

ここで言う間隙部分とは、コンクリート部材内に発生したひび割れ、コールドジョイント、ジャンカのほかに、部材間の打継ぎ目地、接合部を総称します。

 

■コンクリートの強度劣化

 

低品質材、使用環境、熱作用、化学作用、疲労などによってコンクリートの強度が低下する現象です。

 

■大たわみ

 

鉄筋の腐食、ひび割れ、強度劣化のほか、設計・施工欠陥、構造的外力作用、熱作用によって、主として水平部材が大きく変形する現象です。

 

■表面劣化

 

コンクリートの表面が、使用環境、熱作用、化学作用によって損傷し、ポップアウト、はく離、はく落を起こす現象です。

汚れ、エフロレッセンス、浮き、はく落、すりへり、腐食、脆弱化、炭酸化

 

■凍害

 

コンクリート中の水分が凍結融解を繰り返し、ひび割れが発生したり、表面がはく離したりして、表層からしだいに劣化していく現象です。

 

コンクリートの劣化診断方法

一次診断

一次診断として、まず対象となるマンションの概要を把握するために、「建物資料調査」と「現地概要調査」を実施します。

 

建物資料調査、現地概要調査の結果から疑わしい劣化要因に関して、より詳細な調査方法による「高次診断」の要否を判断します。

 

●建物資料調査

 

建物資料調査とは、建物の周辺環境、履歴などの概要および劣化の可能性を把握し、今後どのような劣化現象に重点を置いた診断を行うかを決定するために実施するものです。

調査項目 調査内容
調査概要 調査年月日、調査機関、調査の動機
建物概要

建物名称、所在地、用途、竣工年、建物規模、構造形式、地盤、設計者、施工者、

監理者、建物管理者等

図書記録の有無 設計図書、工事記録、検査記録、過去の調査記録、補修工事の記録
建物周辺の環境 地域区分、海岸からの距離、方位、風向
建物履歴  増改築、補修履歴、被災履歴、クレーム
材料 コンクリート材料(セメント、骨材、製造方法、設計基準強度、仕上げ材(屋内、屋外))
保守管理の状態 長期修繕計画の有無、管理形態、点検実施状況

●現地概要調査

 

現地概要調査とは、建物本体の劣化状況を大まかに把握するための外観調査ですが、通常の目視による調査に加えて、「打診調査」と「反発硬度法」によるコンクリート強度レベルの推定も項目に含みます。

  

調査項目 調査内容 調査部位
目視調査  ひび割れ(パターン、幅)

仕上材のはらみ

はく落・欠損(ポップアウト、鉄筋露出)

表面の状態(汚れ、エフロレッセンス、漏水痕跡等)

表面の脆弱化

漏水痕跡

外壁、パラペット、庇、バルコニー、廊下、

屋外階段、エキスパンジョイント等の

目視が可能な範囲

打診調査  仕上げ材の浮き 外壁(手の届く範囲)

コンクリート

強度レベル

反発硬度法(シュミットハンマー)による調査

階段室等のコンクリート打放し面 

その他

床のたわみ、傾斜、異常体感

床(必要に応じて)

高次診断(二次診断・三次診断)

高次診断では、対象となる主な劣化要因に応じた調査・診断フローに基づき、必要な調査方法を選択して実施する。

 

高次診断の結果は、それぞれの調査結果ごとに記録し、評価を行うが、鉄筋コンクリート躯体に生じる主な劣化現象及び劣化要因は、それぞれが相互に作用しているので、総合判断では、これらの劣化症状ごとの診断結果を総合的に判断し、躯体の初期性能の把握、劣化度と進行予測及び対策方法等について評価を行う。

劣化原因 主な調査方法・測定項目
 コンクリート強度不足 反発硬度法、超音波法、採取コア法による圧縮強度試験法
中性化 ドリル粉末、採取コア(小径、標準経)、はつりにより中性化深さの測定
塩害 ドリル粉末、採取コア(小径、標準経)による塩化物イオン量測定
鉄筋の腐食

自然電位法、分極抵抗法、かぶり厚さ探査、中性化深さ測定、塩化物量測定、

はつり調査

鉄筋のかぶり厚さ不足

電磁波レーダー法、電磁誘導法、はつり調査
凍害 詳細目視調査、空気量測定、気泡間隔係数測定、細孔構造測定、凍結融解試験法

アルカリ骨材反応

打診調査、反発硬度法、超音波法、ドリル粉末分析、ゲル観察、コアの表面観察、

岩石鑑定、ゲル分析、残存膨張量試験