コンクリートの中性化

本来コンクリート中の鉄筋は、コンクリートのpH(水素イオン濃度)が12程度の強アルカリ性環境下では、鉄筋表面が不働態皮膜という化学的に不活性な部分に覆われているため、発錆しません。

 

これが二酸化炭素の作用をうけると化学変化を起こして、コンクリートはpH10以下の弱アルカリ性となります。

 

この状態をコンクリートの中性化と言います。


コンクリートの中の鉄筋は、強アルカリ性の状態であれば腐食することはほとんどありませんが、コンクリートが中性化すると鉄筋表面の不働態皮膜が破壊され、鉄がイオン化されて溶出してしまいます。


コンクリート中の鉄筋が酸化(腐食)すると、鉄筋の断面積が減少して耐力が低下し、また、腐食部分が体積膨張(約2.5倍)することで、かぶりコンクリート部分にひび割れが生じ、酸素と水の供給が促され、鉄筋の腐食をさらに促進することになります。こうして生じたひび割れ等が著しく進行していくと、かぶりコンクリート部分のはく離、はく落を生じることになります。

 

中性化の調査個所

◆調査すべき箇所

・鉄筋の発錆によると考えられる錆汁が見られる箇所

・仕上材(タイル、塗料)やコンクリートの変色、はく離、はく落が見られる箇所

・骨材が露出している箇所

・コンクリート強度が著しく低い箇所あるいは劣化の程度が軽微でない箇所

・立地環境条件が中性化にとって不利な箇所

 


一般に上記の現象が見られる箇所は、コンクリートの中性化による劣化が予測されることから中性化深さの測定を行います。

 

また、屋外では中性化領域が鉄筋位置に到達すると急速に腐食が生じるのに対して、屋内では中性化領域が鉄筋位置に到達しても急速に腐食するこなく、かぶり厚さより20~30mm通り過ぎた時点で有害な腐食状況になることがわかっています。

 

なお、火災でコンクリートが被災した場合は、強度の低下が少なくても中性化が急激に進む場合があるので中性化の測定は必ず実施します。

 

かぶり厚さ:コンクリート表面から鉄筋までの厚さ

 

中性化深さ調査方法

コア採取法

①測定箇所の表面状態を写真撮影

②鉄筋探査機等を用いて鉄筋の位置確認し、コア採取位置を決める

③コアドリルを設置して、所定の直径のコアを採取する

 ・コアの直径は通常30~100mm

 ・深さは鉄筋のかぶり厚さ程度から部材厚まで

④コアの側面に試薬を噴霧して、表面から赤く呈色した部分に至るまでの距離を中性化深さとして、ノギス、スケール等を利用してmm単位で小数点1位まで測定する

 

なお、コア側面において、赤色を呈色した部分との境界が明確でない場合は、コアを深さ方向に割裂した後、その面に試薬を噴霧して測定する。

 

※赤く呈色した部分は強アルカリ部分で、呈色しない部分が中性化部分です。

 



ドリル粉末法

 

①コンクリート表面の汚れ、ごみ等を除去する

なお、仕上材が施されている場合は、10cm四方の大きさで仕上材を取り除く

②試験薬を噴霧した試験紙を削孔粉が落下する位置に保持し、試験面を電動ドリルでゆっくり削孔する

③落下した粉が試験紙に触れて赤く呈色した時点で直ちに削孔を停止する

④ドリルの刃を孔から抜き取り、孔の深さをmm単位で小数点1位まで測定する



はつり法

 

①仕上材のある場合は20cm四方の大きさで仕上材を取り除く

②コンクリートを鉄筋の裏側まではつり取る

③送風機を用いて、はつり箇所の粉塵を除去する

④はつり箇所に試薬を噴霧して、表面から赤く呈色した部分までを中性化深さとして、mm単位で小数点1位まで測定する


中性化による劣化度の評価

中性化の劣化度は、中性化深さの測定値の区分と中性化速度(※)の区分の組み合わせから

「軽度」「中度」「重度」の3区分に評価される。

 

※中性化速度:中世化深さの測定値と経過年数や炭酸ガス濃度係数や温度係数など環境係数を考慮して求められる中性化の進行する速さ