コンクリートの塩害

コンクリート構造物の塩害とは、コンクリート中の鋼材の腐食が塩化物イオンの存在により促進され、鋼材の錆の体積膨張によりコンクリートにひび割れやはく離を引き起こしたり、鋼材の腐食による断面欠損等に伴う構造物の性能低下により、所定の機能を果たせなくなる現象を言います。

 

塩化物イオンによる塩害には、コンクリート製造時に材料から供給される内在塩化物によるものと海水や凍結防止剤等から浸透する外来塩化物によるものがあります。


■内在塩化物による塩害

 

海砂を十分に水洗いせずに使用したコンクリート中では、塩素イオンの存在により、鉄筋の発錆が生じやすく、昭和50年前には、海砂の使用が急増し種々の問題が発生しました。

 

そこで昭和50年には、塩化物イオン濃度の制限が設けられ、昭和61年には、塩分総量を規制する措置が旧建設省通達として制定されました。

 

塩分総量規制がなされたことで、マンションについて言えば、現在はほとんどみられていません。

 

■外来塩化物による塩害

 

海岸地域のコンクリートは、表面に塩分が付着しやすく、それがしだいに内部に浸透していくことによって、塩害が生じやすい。

 

海岸線から200mの範囲内ではその影響がると言われています。

 

こうした塩害は、中性化と相乗して鉄筋の発錆を早め、早期にコンクリートをはく離、はく落させます。

 

また、積雪寒冷地の道路などでは、塩化ナトリウム等塩化物の凍結防止剤(融雪剤)が使用されており、その飛来塩化物によってもコンクリート構造物の障害が発生しているため、こうした道路近傍のマンションでも注意が必要です。

塩害と鉄筋腐食のメカニズム

中性化のページでも述べましたが、コンクリート中の鉄筋は高いアルカリ環境の中では不導体皮膜に覆われて腐食しにく状態にありますが、鉄筋表面における塩化物イオン濃度が一定の濃度になるとこの不導体皮膜が破壊されます。


塩害の調査

コンクリート中の塩化物イオン量を定量的に測定し、現在または将来における内部鉄筋の腐食状況を把握または予測します。

 

■調査箇所

 

調査箇所はできるだけ雨水が当たらない箇所とします。

 

これは、塩化物イオン濃度の分布は雨水等の影響で表層部分が小さくなるからです。

外部からの浸透による場合は、塩化物イオンが最も飛来する面を中心に各面毎に調査することが望ましいです。

■調査資料の採取方法

 

コンクリート中の塩化物イオン量を確実に求めるには、粗骨材の影響を避けるため、コア直径75mm以上の標準コアによることが望ましい。

しかし、躯体への影響を小さくするため、小径コア(20~50mm)、あるいはドリル削孔粉を用いてもほぼ標準コアと同等の値を得ることができます。

 

■採取する深さ

 

内在塩分の可能性が高い場合は、できるだけ鉄筋かぶり部分と予測される位置の資料を採取する

 

飛来塩分の可能性が高い場合は、次の深さとする

・ドリル粉:0~20mm、20~40mm の2点

・コア:0~10mm、10~20mm、20~30mm及び中心位置+-5mmの4点

 

■塩化物イオン量分析方法

 

塩化物イオンの簡易分析法や定量分析法があります。

定量分析法には、電位差滴定法、吸光光度法、硝酸銀滴定法、イオンクロマトグラフィー法などがあります。

 

塩害の評価基準

劣化度 評価
0.6Kg/㎥未満。鉄筋の発錆の危険性はない。

0.6Kg/㎥以上1.2Kg/㎥未満。現時点では、発錆の危険性はないが、

飛来塩分の増加及び中性化に伴う塩化物の移動により将来、鉄筋が錆びる危険性がある。

1.2Kg/㎥以上(限界塩化物イオン量)。鉄筋の腐食が示唆される。