金属部の塗装

マンションの鉄骨、鋼製建具、その他各部位に用いられる鉄鋼面や亜鉛メッキ鋼面を代表する各種の金属類に対する塗装は、防錆を第一として、かつ美装することが目的とされています。

防錆のメカニズムと下塗り塗料

塗料による防錆においては、下塗りに用いるさび止め塗料、プライマー(※)などが重要な役割を持ちます。

塗装における防錆のメカニズムは大別して防錆顔料(※)による科学的防錆効果と塗膜の物理的防錆効果があり、これらの組み合わせによります。

 

※プライマーとは・・・「最初に塗る」ものです。接着性を高める、さび止めをする、などの目的によって選択します。上に塗る塗料によっては、専用のプライマーがメーカーから発売されています。

 

※顔料とは・・・着色に用いる粉末で水や油に不溶のものの総称。 着色に用いる粉末で水や油に溶けるものは染料と呼ばれる。

 

■さび止め顔料による化学的効果

①金属塩顔料

②イオン化傾向を応用したさび止め顔料

 

■塗膜の遮断機能による物理的効果

①遮断機能を持たせた顔料

②高性能合成樹脂塗膜

③悪素地、異種塗膜塗替施工可能塗膜

建築関係金属面塗料の種類

■油性調合ペイント

鉛系さび止めペイントと組み合わせて使用するが、最近はほとんど使用されていない。

主な適用箇所は、一般鉄部。

 

■合成樹脂調合ペイント

油性調合ペイントの改良品として乾燥性・光沢性を向上させた塗料。

主な適用箇所は、一般鉄部・構造鉄部・鉄扉・ベランダ手すり・鋼製建具など

 

■フタル酸樹脂エナメル

内部用の高級仕上げに用いる上塗り。主な適用箇所は、鋼製建具・設備

 

■塩化ビニル樹脂エナメル

耐薬品性(※)、耐水性に優れた速乾性の上塗り。主な適用箇所は、耐薬品性が要求される鋼製設備など

 

※耐薬品性とは・・・酸,アルカリ、その他化学薬品中で使用したとき外観や物性の変化,膨潤などに耐える性質

 

■塩化ゴム系エナメル

速乾性、腐食条件下での耐久性を向上塗料。主な適用箇所は、海洋近く、排気ガス近くの鋼製建具・鋼構造

 

■重防蝕耐久性と膜系

①エポキシ樹脂エナメル

②ウレタン樹脂エナメル

③アクリルシリコン樹脂エナメル

④常温乾燥型フッ素樹脂エナメル

 

これらの塗料のうち、一般的なマンションの鉄鋼面に最もよく使用されているものが、下塗りに「鉛系さび止めペイント」+上塗りに「合成樹脂調合ペイント」の組み合わせであり、修繕もこれらが主流となっています。

建築設備関係の塗料の種類

建築に付属する設備関係の金属製品の塗装は、一般に製作工場において行われますが、塗装系には高温(80℃以上)により化学反応などをさせて乾燥硬化させる加熱乾燥形(※)が用いられる。

 

※加熱乾燥型とは・・・温度を上げて乾燥させる方法のこと。

その他の金属

■亜鉛メッキ

鋼材の防錆を目的とする亜鉛メッキには大別して2種類ある。

①溶融亜鉛メッキ鋼板・鋼材・・・鋼板・鋼材を溶融した亜鉛溶解槽に浸して表面に亜鉛の皮膜を施すもので、「どぶづけ」とも言われ、比較的短時間で厚みのある亜鉛メッキが可能で、鋼材に用いられるケースが多い。

②電気亜鉛メッキ鋼板・・・亜鉛の金属塩水溶液中において、鋼材・鋼板を陰極とし、亜鉛を陽極として電流を通じ、鋼材・鋼板の表面に亜鉛の皮膜を作るもので、鉄扉などに多く用いられる。

 

■アルミ製品

アルミニウムは、空気中で酸化し、薄い酸化アルミニウムの皮膜を作るため、優れた耐食性(※)を示す金属で、建材などに広く使われています。

しかし、酸・アルカリには容易に侵され、一般環境以外では亜硫酸ガス・排気ガスなどの腐食ガスで容易に腐食を生じるため、表面処理が必要となります。

 

※耐食性とは・・・金属が腐食しにくいこと。錆が発生しにくいこと。

 

①アルマイト処理・・・シュウ酸、硫酸、クロム酸などの水溶液中でアルミニウムの表面に電気的に酸化皮膜(※)を形成する方法のこと。

 

※酸化皮膜とは・・・アルミニウム、ステンレス等の金属類の表面に発生する、いわゆる「錆」の事を指し別称「不動態皮膜」とも呼ばれておる保護膜のこと

 

②塗装仕上げ・・・アルマイト処理後に塗装されたもの。殆どの場合、工場塗装されたものが建材などに用いられている。

金属部塗装の耐用年数

素地、下塗り、中塗り、上塗りの組み合わせなど、さまざまな要因により変動します。

 

■常温型乾燥塗膜

素地が鋼の場合で、4年~7年が多く、ものによっては10年、15年のものもあります。

 

■加熱乾燥型塗膜

素地が鋼の場合で、4年~7年が多く、ものによっては15年のものもあります。

 

■素地が亜鉛メッキの場合

素地が鋼の場合で、4年~7年が多く、ものによっては15年のものもあります。

塗装面の劣化現象

■鉄鋼面塗装の劣化

劣化現象 原因
 ふくれ・割れ・浮き・はがれ・さび混在  塗膜の劣化が進行し、各種の劣化により、塗膜の機能が低下して素地の部分より錆を発生している状態
赤錆 塗膜が劣化し、金属面が露出して、その表面に水酸化物や酸化物を主成分とする腐食生成物(錆)が生じる
断面欠損  金属表面の腐食(赤錆)が鋼材内部まで進行して、鋼材の厚板が減少する。部位によっては構造安全上重大な劣化現象となる。

■亜鉛メッキ鋼板素地含む劣化

劣化現象 劣化位置 原因
 白錆 亜鉛メッキ層  塗膜の劣化により露出した亜鉛メッキ面において亜鉛が水酸イオンや炭酸イオンと反応して白色の塩基性炭酸亜鉛(白錆)を生成する
損耗 亜鉛メッキ層 亜鉛メッキ層が白錆となり、表面から失われていく現象
浸食消失 亜鉛メッキ層 損耗が進行し、メッキ層の深部まで腐食が進んだ状態やメッキ層が失われた状態
赤錆 鉄鋼面 亜鉛メッキ層が劣化進行し消失して、鉄鋼面が露出して赤錆を呈する状態
断面欠損 鉄鋼面  亜鉛メッキ層が部分的に消失し、鉄鋼面に局部腐食が生じ、さらに鉄鋼面の深部へと腐食が進行した状態

アルミニウム合金製部材の劣化

汚れ
劣化現象 原因
 付着物  からぶき又は水洗いによって除去されるもの
軽度の固着物 からぶき、水洗いでは除去されないが、中性洗剤で除去されるもの
軽度の固着物 除去するために溶剤又は研磨剤入洗浄剤を必要とするもの
しみ 汚れが皮膜、塗膜の内部に浸透し、洗浄によっては除去できない汚れ
変色
劣化現象 原因
 白化  表層部が劣化し、粉状を呈した状態
干渉色 表層部が劣化し、虹色を呈した状態
白亜化(チョークング) 皮膜・塗膜の表面が劣化し、不透明な白色粉状になった状態
黄変 クリヤー塗膜が劣化し、黄色味を帯びた状態
劣化現象 原因
 ひっかき傷  深みのない表面的な傷
凹凸 深みのある立体的な傷
腐食塗膜劣化
劣化現象 原因
 点食  大気中の汚染物質の付着により生じた点状の腐食
孔食 貫通孔を生じた腐食
変形 裏面腐食の生成物により、ふくれを生じたもの