1回目の大規模修繕工事の実施時期

ほとんどのマンションで推奨される最初の大規模修繕工事の実施時期は、築12年目から15年目と言われています。

 

 

10年ほど前には、地区10年と言われていました。


物理的観点(耐用年数)から

この年数は、コンクリート面などに施されている外壁塗装材や、バルコニーや共用廊下の床面(または、排水溝のみ)、庇部分等に施されている塗膜防水、さらには、外壁目地に充填されているシーリング材の耐用年数を考慮したものといわれ、いずれも、新築時の材料性能を回復させることが工事の目的となります。

 

法的観点から

多くのマンションは規模にもよるが、「特殊建築物」に該当します。

 

特殊建築物は、定期検査を実施し特定行政庁に報告しなかればなりません。そして、自治体によっては、外壁がタイル貼り仕上げとなっている場合は、「竣工後10年を超えてから最初の調査である場合は、歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の、全面的なテストハンマーによる打診等により確認」することが必要となります。

 

ただし、「当該調査の実施後、3年以内に外壁補修もしくは、全面打診等が行われることが確実である場合は、全面打診等を行わなくても差し支えない」との規定もあり、築13年目までに大規模修繕工事を実施するという考え方もあります。

 

また、一般的にマンション売買契約には、アフターサービス(保証)の基準が設けられています。保証基準が設けられていない場合でも、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確保法)」に基づき、瑕疵の修補請求をすることができます。品確保法では、建物の「構造耐力上主要な部分」または「雨水の侵入を防止する部分」について、建物の引渡しを受けた時から10年間に限り、瑕疵修補の請求権が認められています。

 

鉄筋コンクリート造りのマンションの場合、漏水につながるようなひび割れや、錆びた鉄筋の露出、屋上や窓まわりから室内への漏水などが該当する可能性があります。

 

よって、築10年目を経過する前に建物を調査し、保証対象部位の不具合修補請求を行った上で、瑕疵修補工事と大規模修繕工事を一緒に行うとする交渉も可能な場合があります。

 

1回目に屋上防水工事を含めるか?

「保証切れ」や「汚損」を考慮して、1回目の大規模修繕工事に実施すべきかどうか悩ましい部分が屋上やルーフテラスの防水工事です。

 

平らな屋根(陸屋根という)を持つマンションの場合、ほとんどの建物は新築時にアスファルト防水が施されています。

 

そして、日常的に居住者が屋上を歩行するかいなかによって、その仕上げが異なってきます。

 

妻側(角)の住戸に見られることの多いルーフテラス(真下は住戸の居室となっている)などは、アスファルト防水層の上に、防水層を保護するためのコンクリートが打設されて仕上がっています。

 

一方、最上階の上の屋根等は、普段は施錠されて立ち入ることの出来ない屋上部分は、人が頻繁に歩行することがないことから、アスファルト防水層が露出して仕上げられています。

 

いずれの仕上げでも、必ずしも1回目の大規模修繕工事の際に、防水回収工事を施す必要はありません。

 

前者の保護コンクリートのある屋上の場合、新築時の設計や施工に問題がなければ、20年以上の耐用年数が十分に期待できる工法です。

 

また、後者の露出アスファルト防水の場合においても、表面に施されている紫外線等を反射する塗料が劣化したり、排水口まわりに部分補修で対応可能な不具合が見られたりする程度であれば、全面的な改修を必要とするケースは少ないでしょう。

 

一般的なバルコニー(真下もバルコニーとなっている)は、仮に漏水しても、下階の居室でなく外部であるバルコニーにのみ被害が生ずるケースが多いという考え方から、新築時には、簡易的な防水で済まされていることが多く見られます。