老朽化と隠れ債務〇億円

2020年には、築30年以上となるマンションは220万戸、実に総マンション戸数の3戸に1戸となります。

マンションも築20年、30年と経過すると、建物や設備の劣化のハード面だけでなく、管理運営のソフト面でもいろいろな問題が顕在化してきます。

 

大規模修繕工事と隠れ債務〇億円

12年から15年周期で行われるのが、大規模修繕工事です。

 

ほとんどのマンションでは、1回目の大規模修繕工事は、なんとか無事行われますが、問題は2回目以降の大規模修繕工事です。

 

(24年目~30年目)、(36年目~45年目)に行う大規模修繕工事は、修繕範囲も広がり、修繕方法も大がかりなものになってきます。その分費用もかさみます。

 

よく言われるのが、1回目は1戸当たり100万円、2回目は1戸当たり150万円、3回目は1戸当たり250万円の予算が必要と言われています。

 

例えば、戸数100戸のマンションでの必要予算は、次のようなります。

 

第1回大規模修繕工事・・・100万円 × 100戸 = 1億円

第2回大規模修繕工事・・・150万円 × 100戸 = 1億5千万円

第3回大規模修繕工事・・・250万円 × 100戸 = 2億5千万円

 

ところが、1回目の大規模修繕工事で修繕積立金は使い切り、ほとんど0円となります。

そこで、毎月徴収する修繕積立金を5年毎ぐらいに値上げするのですが、それでも足りません。

 

しかたなく、一時金を徴収したり、金融機関などから借入をしたり、修繕範囲を縮小したり、修繕方法を簡便にしたりするのです。

 

それでも実施できずに延期するという事態となれば、建物・設備の劣化がその間より急激に進行し、マンションの資産価値が大幅に減少することにもなりかねません。

 

エレベーターと機械式駐車場

エレベーターも30年頃を目安に、更新(取り替え)時期を迎えます。

更新方法にもよりますが、エレベーター1基につき、1,000万円から2,000万円必要となります。

タワーマンションの場合は、もっとかかります。エレベーター1基1億円とも言われています。

 

エレベーターが1基しかない場合のエレベーター休止期間をどう対応するかなどの問題もあります。

 

機械式駐車場も25年頃を目安に、更新(取り替え)時期を迎えます。

1パレット(台)当たり、100万~150万円必要となります。

50パレットあれば、5,000万円~7,500万円になります。

 

これらも大きな隠れ債務の一つです。

 

給水管と排水管

使われている材質にもよりますが、30年~40年頃を目安に更新(取り替え)時期を迎えます。

戸数や工事内容にもよりますが、数千万円~億円近く必要となります。

 これも大きな隠れ債務です。

 

また、専有部分内にある給水管・排水管の更新工事は、どの範囲までを「自己負担とするのか」「組合負担とするのか」の問題もからんできます。

 

賃貸化と空き家

話は変わりますが、築年数が経過していくと、管理組合員である区分所有者が転勤や、他の家の購入などで転居するケースが増えてきます。

 

そこに、賃借人が住むケースも当然、増えてきます。

ちなみに築20年以上のマンションの賃貸化率は20%前後です。

1棟100戸のマンションであれば、20戸の割合です。

築年数が古いほど賃貸化率は高くなる傾向があります。

 

転居した区分所有者は、そこには住んでいませんので、なお一層、管理組合活動に無関心となります。

 

賃借人は、区分所有者ではありませんので、管理組合員でもありません。

賃借人は、いずれは転居するつもりですから、マンションに愛着もなく、建物設備への維持保全に関心はなく、共同生活のマナー面でも意識は低くなります。

 

さらに、賃借人も住まないで、空き家となり、区分所有者とも容易に連絡が取れない。

区分所有者が亡くなり、空き家のまま、相続人も不明で、手のつけようがない。

 

このような空き家状態となると、管理費・修繕積立金も長期滞納の状態となり、隠れ債務の一因となります。

 

20年先、30年先のことは誰が考えるのか?

マンション管理会社は、考えてくれません。

本来は、管理組合員自身が考えるべきなのですが、知識も経験も時間も不足しています。

 

そこで、知識も経験もあり、仕事として時間を振り向ける事の出来るマンション管理士が、20年先、30年先を考え、管理組合に提案する仕組みが求められてきます。