人口減少時代にふさわしい供給維持解体の新ルール

マンションはこれからも維持できるのか?

人口減少に直面し、空き家問題が深刻化している。

 

それに伴い、行政が強制解体に踏み切る事態が増えた場合、本来、住宅の所有者が負担すべき費用を社会全体で負担するケースが膨大になりかねない。

 

こうしたリスクに対応するためには、住宅の供給・維持・解体に関する明確なルールが必要であるとの日本総研による提言です。大きな問題となる分譲マンションに焦点を絞ったレポートです。

 

マンションの管理不全・廃墟化のリスク増大

マンションに関する法制度は、1962年施行の区分所有法を基盤とする。

 

区分所有建物の権利関係を明確化したほか、管理運営における自治を広く認めた。

 

その後も、管理運営の適正化や建て替え等に係る要件の緩和や手法の多様化などを目的に、同法の改正や追加立法が進められきた。

 

一方、実際の管理状況をみると、修繕積立金の額が計画上の水準に比べ不足している管理組合が過半数を超えているなど、将来にわたって適切に維持管理できるのかが懸念されている。

 

建物の高経年化と所有者の高齢化に直面し、管理不全・廃墟化のリスクが増大している。稀なケースではあるが、自治体が強制解体に踏み切った事例も発生している。

 

国・自治体の取り組みは不十分

国は、管理運営面での行政の役割強化、敷地売却制度の要件緩和、敷地分割制度の創設などの法改正を実施してきた。

 

自治体のなかには、独自に届出制度や情報開示制度などに取り組んでいる。

 

また、修繕積立金が不足する管理組合向けに融資する際の信用補完策の検討のほか、マンションの市場価値の適正化に向けて、個々のマンションの情報開示や管理状況評価のための枠組みを検討する動きもある。

 

これらは、評価できるが不十分である。

 

このままでは、行政が管理不全・廃墟化マンションの強制解体に踏み切らざるを得ない事態が多発しかねないと警告しています。

 

マンション関連法制度の問題点と改善点

区分所有権や私的自治等などの”権利”が認められる一方で、本来はそれと表裏一体であるべき、維持管理・解体等に関する当事者の社会的な”責任”や”義務”に関してほとんど規定されていない点にある。

 

今後、国や自治体は下記5つの改善が必要と提言しています。

 

①マンション関連法に当事者による適正な管理等に関する義務や責任を明記する

②届出・情報開示制度を整備し、管理の現状をしっかり把握する

③維持管理・解体の義務の具体的範囲や内容を国として明確に定める

④マンション再生に自治体がより積極的に関与する枠組みを整備する

⑤管理・再生のあり方を現実に即して、柔軟化・多様化する

 

新規供給にも見直し必要←ここ重要

マンションを含む住宅の供給のあり方についても議論を深める必要がある。

 

具体的には、住宅ストックの総量に目安・目標を設けたり、開発規制を導入したりして、新規供給を抑制していくことも必要。