第3の道(取り壊し&敷地売却)

定期借地権付きマンション

あるマンションのモデルルームでのこと

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お客さん:「このマンションは定期借地権付きマンションとのことだが、どういうこと?」

営業マン:「マンションの敷地は地主さんのもので、50年間お借りして、マンションを建てたものです。」

お客さん:「と言う事は、このマンションを購入しても土地は、私のものにならないと言うこと?」

営業マン:「その通りです。住戸はお客様のものですが、土地は地主様のもので、毎年地代(土地の借賃)をお支払い頂きます。その分購入費は所有権付きのマンションに比較してお安くなっています。」

お客さん:「50年後はどうなりますか?」

営業マン:「マンションは取壊して、更地にして、土地をお返しすることになります。」

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最近、地主さんの相続税対策の一面もあるようですが、再び、定期借地権付きマンションの新規分譲が増えてきたそうです。

 

50年~60年の期間、デベロッパーが土地を賃貸借して、その上にマンションを建設して、住戸部分を販売して、土地部分は転貸する形です。

 

分譲価格は、一般的な所有権付きと比較して、2割から3割程度安くなります。

但し、土地の賃借代が毎年別途必要となります。

 

また、賃借期間終了後は、建物を取壊して、更地にして返却する場合は、取壊し費用を一時金及び積立費と別途徴収されます。

 

但し、契約によっては、取壊しはせずに、建物付で土地を返却する場合もあります。

この場合は、地主さんが建物を引き続き賃貸物件とするか、あるいは別の用途に使用するか、その時の状況によって判断されることになります。

 

合理的な方法

50年後、60年後、住戸購入者にとっては、建物を含めて所有権を失いますので、資産価値は「0」となりますが、購入者自身の一代限りの不動産と考えれば、合理的な仕組みです。

 

マンションの終活の面からも、はっきりしており、50年、60年間の維持管理をどうするかと目的を絞り込んだ対応がとれるというメリットがあります。

 

所有権付きマンションの場合でも

所有権付きマンションでも、50年後、60年後には、「取壊し&更地を売却」又は「建物ごとの売却」を終活と定めれば、マンション管理組合として、それに向けた取り組みができて、維持管理の面でも合理的な意思決定が出来ると思います。

 

分譲マンションを初めとした「新規住戸供給数の増加」、その一方での「空き住戸」の激増、少子高齢化に伴う「世帯数の減少」「居住者の高齢化」これらの状況を考慮すれば、「建替え」や「長寿命化」ではなく、「取壊し&更地を売却」を終活と定めて、そのための大規模修繕を始めとした維持管理を進めていくのが、最も負担も少なく、無駄な投資をしないで済む方法だと思います。

 

 

また、スラム化した建物を発生させないためにも必要なことだと思います。

 

所有権付きマンションの取り壊し&敷地売却のために

マンション敷地の所有権付きのマンションを築50年、60年で取り壊して敷地を更地にして売却するというマンションの終活を行うために必要なことを考えてみました。

 

<敷地売却等の合意>

まずは、最終的には、「建物を取り壊して更地にして売却する」又は「建物は取り壊さずそのまま売却する」と言うことの合意が必要です。

この合意には、区分所有者全員の合意が必要です。

現行法上は、4/5以上などの多数決により議決は認められません。

近い将来的には、区分所有法の建替え決議と同じく「敷地売却等」を4/5以上などの多数決により決議できるようにする必要があります。

 

<敷地売却益等の分配基準の合意>

敷地売却益等の分配基準を敷地利用権の共有持分とすることの合意が必要です。

一般的には、敷地利用権の共有持分は、共用部分の持分割合と同じく専有部分の床面積割合と同じとなっていますので問題ないと思いますが、異なる場合は、協議する必要が出来てきます。

 

<取壊し費用の積立>

建物の取壊し費用を見積、修繕積立金・管理費等とは別に積み立てる必要があります。

費用分担比率は、修繕積立金・管理費等と同じく、専有部分の面積比とします。

最終的な売却交渉で取壊ししないで売却する場合は、積立金を分配し返却します。

 

<専有部分の買取制度の導入>

取壊し前に区分所有者の転居や死亡等で第三者に売却や相続できない場合に、管理組合が専有部分を買い取る制度を導入する必要があります。

買い取った専有部分は、管理組合が別途、第三者に売却又は賃貸します。

買取価格は、不動産鑑定士による評価額を基本とし、1割~2割程度割り引いた価格とします。

買い取った専有部分の修繕積立金・管理費等の諸費用は管理組合が負担します。

 

<新規購入者(賃借人)の購入時(賃借時)の取壊し承諾>

中古物件の購入者や賃借人に対して、将来、取壊しすることを承諾の上、売買契約、賃貸借契約を締結してもらう。

承諾書の管理組合への提出を義務付ける。

 

<管理組合の法人化>

専有部分の買取や、将来の敷地売却などに備えて、法人化しておく。

 

<管理組合法人の不動産等所得の非課税化>

管理組合による専有部分の売買や賃貸、将来の敷地売却等による所得の非課税化

また、空き駐車場スペースの賃貸収入等の不動産等所得を非課税として、不動産の売買・賃貸を行いやすくする。

 

<将来の取壊しを前提とした大規模修繕計画等の作成>

築50年後、又は60年後に建物を取壊すことを前提にした、大規模修繕計画等を作成する。

50年間、60年間だけ快適に暮らすことを目標に、無駄な支出を抑制する。

例えば、大規模修繕工事の実施回数を減らす。

給排水設備の取替でなく、改修で行うなど。

 

<住宅ローン政策の変更>

すこしマクロ的な視点ですが、中古物件の取引拡大のために、住宅金融公庫等の住宅ローンの最長期間を現行の35年から25年程度に短縮することが必要です。

現状の新築物件購入を促進する35年ローンを止め、25年ローンを最長期間とします。

25年程度で返済可能な借入額とすることで、中古物件の取引拡大を促します。

こうすることで、30代、40代で中古分譲マンションを購入した人も、50代、60代にはローンが完済しており、購入した中古分譲マンションの取壊しなどにも柔軟に対応することが可能となるサイクルを作ることができます。

新築分譲マンションを購入するには、それなりの自己資金がある人だけが購入できるように、全額ローンで購入するような安易な住宅購買をさせないようにするべきです。

 

<抵当権の扱い>

住宅ローンなどの抵当権が残っていた場合の対応策を構築する

売却益を残債に強制的に充当して完済する。

任意売却により管理組合が購入する。

 

<行政による転居先の斡旋>

区分所有者や賃借人の転居先を行政により斡旋する仕組みを構築する

 

<行政による補助金制度>

取壊し費用の一部を助成する制度を構築する。

 

<結論>

既にあるマンション建替え円滑化法にある敷地売却制度に準じた仕組みが整備されていけば、マンションの終活としての建物の取壊し&敷地売却も現実的な対策となっていくと思います。