騒音問題の裁判例

騒音問題が残念ながら裁判沙汰となってケースはかなりあります。

結果は、被害者側の主張が認められてリ、認められなかたっりと様々です。

 

◆受忍限度(我慢の限界)

 

専有部分から発生される音が、受忍の限度(我慢の限度)を超えるものであれば違法行為とになる可能性が考えられます。

 

受忍限度を超えているか否かについては、被害の種類、程度、影響、地域性、加害行為の社会的価値、必要性等の要素を総合的に判断して決定されることになると思われます。

 

◆共同利益に反する行為

 

また、騒音の及ぶ範囲により、区分所有法第6条に定める「共同利益に反する行為」に当たる違法行為か、または当事者間で解決すべき違法行為かに分けられます。

 

騒音が、上下階や隣戸などに住む特定の者だけに迷惑を及ぼす場合がありますが、これについては、当事者間で解決すべき問題といえます。

 

 また、音楽活動の練習やカラオケ音のように大きな音を発生させて、近隣の複数の居住者に迷惑をかけていることがあります。

 

この場合は、発生した音が、平穏な生活を阻害をするなど受忍の限度を超えていれば、「共同の利益に反する行為」になると考えられます。

 

 これに関連する裁判例としては、マンションの1階店舗でカラオケスタジオとして使用していることによる騒音は共同の利益に反するとされた例があります(東京地判 平成4年1月30日)。

 

リフォーム工事の中止申入れ

リフォーム工事に関して、その騒音と振動によって隣接居住者であった妊婦の母体及び胎児の生命,身体に対する回復困難な被害が生ずることが強く懸念される状況から,管理組合の理事会が、その緊急性を判断し電子メールなどによって工事中止を求める決議を行い、施工主及び施工会社に工事中止を申し入れたことに対して、施工主の不法行為に基づく損害賠償請求が否定されたもの(東京地判平成26年10月1日)が注目されます。

 

すなわち、リフォーム工事中止申入は妥当であるとの判決結果となりました。

 

同事案は、管理組合の判断によるリフォーム工事を一時中止する請求が不法行為になるか否かが問われたものですが、マンションの経年劣化・再生が進む今後は、本件のようなリフォーム工事の振動・騒音被害をめぐる紛争が増えてくると思われます。

 

一般に、マンションにおける生活紛争では、その被害の範囲が一部の区分所有者間に限定されるか、それとも、マンション全体の共同の利益に関わるかで、紛争解決の主体が変わってくるのが原則ですが、特に、リフォーム工事等では、規約上、予め理事会の承諾を得なければならないとされる全体管理に服している場合が多いと考えられますので、前述の被害範囲の如何に関わらず、まずは理事会に相談をして解決を図ることが望ましいでしょう。

 

 また、リフォーム工事においては必然的に一定の工事期間内は、激しい騒音と振動を伴うものですから、隣接居住者等の受忍限度を超えて工事の差止請求が、可能か否かの判断基準が重要となってくるでしょう。

 

フローロング化後の騒音問題

フローリング化後の騒音が受忍限度を超えるものとして損害賠償請求を認めたもの(東京地八王子支判 平成8年07月30日)、否定したもの(東京地判 平成6年05月09日)、(東京地判 平成10年01月23日)、(東京地判 平成19年10月03日)などがあります。

 

復旧工事や防音対策の請求等については否定したもの(東京地判 平成3年11月12日)、(東京地八王子支判 平成8年07月30日)があります。

 

その音が社会通念に照らして(客観的に一般人の立場にたってみて)受忍限度(一般人が我慢できる範囲)を超えているときには不法行為となる場合があります。

 

 すなわち、侵害行為の態様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害の発生源の所在地の地域環境、侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等の事情をも考慮し、これらを総合的に考察して判断するとされています。

 

 したがって、たとえ、ファミリー向けのマンションでかつフローリングの防音レベルが標準よりやや劣る程度に高く、階上の居住者においてマット等を敷くなどの対応をとったとしても、専門家による測定において騒音レベルが50~65dBとひどく、騒音をたてる時間帯や、加害者側に、その他子供をしつけるなどの方策を講じるなどの騒音を改善する誠意が認められない場合には、階下の被害者の精神的苦痛に対して、慰謝料等の損害賠償請求ができるものと考えられます。